新型コロナワクチン「効果9割」も「安全性、証明できる段階にない」専門家が警鐘 ファイザー、モデルナの違い

2020年11月18日 21時13分
 新型コロナウイルスのワクチン開発で、米国の2つの製薬会社が、最終段階の治験で9割の効果があったと相次ぎ発表した。いずれもRNAを使う新タイプ。専門家は「効果はありそうだが、安全性は証明できる段階にない」と、過剰な期待を疑問視している。

◆初期の解析結果「都合がいい数字の可能性も」

 米ファイザーは今月9日、約4万3000人を対象にした試験で90%以上の効果があったと発表。米モデルナも16日、3万人で94・5%の効果があり、感染者の重症化も防げたと公表した。

 北里大の片山和彦教授(ウイルス学)は「9割が本当なら、国が定期接種で認可しているワクチンと同水準」と評価する。一方で大阪大の宮坂昌之名誉教授(免疫学)は「効きそうだとは言えるが、まだ初期の解析結果。ファイザーの場合、2度目の接種のたった1週間後の感染率で評価しており、都合がいい数字を出している可能性も否定できない」とみる。
 2社で大きく異なるのは保存温度だ。ファイザーはマイナス70度程度の超低温が必要という。RNAは壊れやすく、研究機関ではマイナス80度の特殊な冷凍庫で保管する。病院で管理できる温度ではない。
 ところがモデルナのワクチンは2~8度の冷蔵で30日間は保存できるという。この温度なら小さなクリニックでも扱える。宮坂さんは「モデルナの発表には驚いた。(RNAを壊れにくくする)新しい安定化剤を使ったのかも」と話す。

◆背景に五輪?日本の状況では「急ぐ方がリスク大きい」

 ただ、ワクチン開発では最終段階の第三相試験だけで3~5年かけるのが普通だ。今回はいずれも開始から3カ月。両社とも「今のところ重い副反応(副作用)はない」とするが、片山さんは「接種で免疫がついて変化していく人体のサイクルは速められない。治験を短くするのは無理がある」と指摘する。RNAワクチンはまだ実用化されたことがない新技術だ。他のコロナウイルスのワクチン開発では接種後しばらくして重い副作用が出たケースもあり「2年は見ないと安全とは言えない」と強調する。
 日本はワクチンへの信頼度が特に低いとの英科学誌の調査もある。脳炎やショック症状が100万人に数人出るだけで使用が停止された例もある。今回の治験はこうした頻度の低い副作用を調べるには規模が小さい。
 宮坂さんは「ワクチンは副作用を超える効果があると評価され初めて使用が許される。米国ほどの感染が起きれば接種を急ぐ理由になるかもしれないが、日本の状況では急ぐリスクの方が大きい」と訴える。「五輪があるので接種を急ぎたいのだろうが、十分な評価なく集団接種して副作用が相次げば、ワクチン全体への信頼をさらに下げる」と警告する。(森耕一)

遺伝子ワクチン 従来のワクチンは弱毒化したウイルスやその断片を接種して体に覚えさせ、免疫をつけてきた。遺伝子ワクチンは、断片となるタンパク質の設計図となるDNAやRNAを接種し、体の細胞自身にウイルス断片のタンパク質を作らせる。比較的早く簡単に作ったり設計を変えたりできる。今回のように急いでワクチンを開発する際には向いている可能性があるが、実用化された例はまだない。

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