コロナ治療 最前線 看護師過労「改善急いで」 有志団体「医療持続へ法整備を」  

2020年11月19日 07時16分
 8時間も防護具を着けたまま、水も飲めず、トイレにも行けず…。新型コロナウイルスの治療の最前線で、看護師が過酷な労働を強いられている。理学療法士や清掃職員の仕事を肩代わりすることも多いようだ。看護を取り巻く課題について研究、発信している有志の団体「看護未来塾」は、看護師の労働条件の改善を訴えている。 (大森雅弥)
 九月十二日、未来塾がオンラインで開いた勉強会。コロナの重症患者を受け入れている二つの大学病院の集中治療室(ICU)に勤務した経験のある看護師三人が、受け入れ始めた当初の様子や現状を報告した。
 そのうちの一人は、患者に装着した人工心肺装置「ECMO(エクモ)」が安定して動きだすと、医師がベッドサイドを離れ、清潔なグリーンゾーンに退いた状況を説明。看護師だけが汚染されたレッドゾーンに残り、患者の容体の変化を見逃してはならないという使命感と感染の恐怖で気持ちが張り詰めていた。加えて、通常は看護師の仕事ではない室内の清掃やリハビリなども任され、手が回らなかった。
 さらに、ICUは感染防止のために気圧を低くした陰圧室。医療機器の発散する熱がこもって想像以上に暑く、PPEと呼ばれる個人防護具の下は皆、汗だくだった。着脱に時間がかかるため、水を飲むこともトイレもままならない。最低でも四時間、時には七、八時間もレッドゾーン内に居続けたという。
 厳しい医療現場を何度も経験してきた未来塾メンバーのベテラン看護師たちも「驚いた」と言う過酷さ。この内容をホームページ(HP)で公開したところ、共感する声が多く寄せられ、メンバーは「三人の経験が特殊な事例ではないことが分かった」と話す。PCR検査にあたる医療機関の看護師らから「私たちの方がもっとひどい。PPEを着けて四時間立ちっぱなし。患者さんの不安も和らげないといけない」という切実な声も届いた。
 未来塾は現場の看護師の労働条件を速やかに改善すべきだとして十月、国などに対策を求める提言をまとめ、HPで公開。ICUでの業務を労働基準法などでの「危険有害業務」に準じた扱いとする法整備や、労働時間や休憩時間のルール作りなどを挙げている。
 未来塾の世話人の一人で、日本赤十字看護大名誉教授の川嶋みどりさん(89)は、看護師の業務が法律上「療養上の世話」と「診療の補助」の二つであることから、医療機関内の「何でも屋」として使われがちなことを問題視する。「医療関係者に拍手を送る運動が世界中ではやったが、コロナ治療の現場で頑張る看護師たちの行動を単なる美談や称賛の対象にしてはならない」と指摘。「コロナとの戦いはこれからも続く。持続可能な医療態勢を構築するためにも看護師の労働過重を解消すべきだ」と訴える。

◆「困った経験」94.4% 東京都看護協アンケ

 東京都看護協会が6月、都内の医療機関など234施設の看護師らから回答を得たアンケートでも、94.4%が新型コロナウイルスへの対応で「困ったことがある」と答えるなど、看護職の厳しい実態が浮き彫りになった。
 困ったことの内容別では、医療用マスクやゴーグルなどの「個人防護用具の不足」が最も多かった。次に「患者への対応」が続き、未知の感染症に対する恐怖や不安、緊張による「精神面の不調」、「働き方」、「人材不足」なども目立った。
 一方、看護職員へのメンタルヘルスケアについては54.3%の施設が「工夫している」と回答。精神科医師や臨床心理士らによるサポート態勢の整備、相談窓口の設置、感染対策の徹底、声かけ・傾聴などの取り組みが見られた。

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