<トヨタウォーズ番外編1>社内共通の価値観、コロナ危機を乗り越える鍵に

2020年11月19日 17時00分

◆現場が自立的に判断…異業種でも真価発揮

 トヨタ自動車は、新型コロナウイルスが世界的にまん延する中でも国内外の生産体制を維持し、販売の落ち込みから素早く回復しつつある。生産を統括するチーフ・プロダクション・オフィサーの友山茂樹執行役員(62)は、本紙のインタビューに「トヨタ生産方式(TPS)が真価を発揮するのは、世の中が大きく変化する時」と話し、社内共通の価値観であるTPSが、コロナ危機を乗り越えるための重要な要素だとの認識を示した。車とインターネットがつながるコネクテッド分野担当の立場から、モビリティ(移動)サービスのさらなる可能性も指摘した。
 ―コロナ禍の生産維持とは。
 「感染者の状況、部品の状況を時々刻々と見つつ、売れない地域で在庫があふれそうな時は生産を落とすなど、きめ細かな調整をしている。例えば中国など回復が早い地域は、日本で生産した車を売るなどし、アジアで外出制限により仕入れ先が生産できない時は、日本で代替え生産してつないだ。苦しいながらも生産から販売へつなげた。でも一朝一夕にできたわけではない」
 ―なぜ可能だったのか。
 「ウイルスという新たな敵との闘いに、『大本営』で情報を分析、会議して判断していたら遅い。現場が自立的に判断しても、経営のベクトル(方向性)とずれないのは、TPSがあるから。今回も現場が自立的に動いて、ラインを止めて代替え生産を手配した。報告も挽回計画も後回し。止めることが重要。TPSは異常を常に顕在化させ、徹底的に原因を追究し、改善したらまた動かしていいというおきてであり、作法だ。これが危機に対する強みになる」

コロナ禍での社会貢献について話すトヨタ自動車の友山茂樹執行役員=名古屋市内で

 「もともとTPSは変化に迅速、柔軟に追従していくための決めごと。収益力、開発力と一般的にいうが、それは結果で、そこに至るまでの仕組み、人材、風土の3つがそろう必要があると考える。そうでないと企業体質は強くならない。共通しているのがTPSという価値観だ」
 ―コロナ支援で、TPSが異業種で真価を見せた。
 「これまでも農業などでやっているが、コロナという国民共通の脅威に対し、医療部門で信用されたことで、多くの人の共感を得たと思う。TPSがトヨタの工場のためだけではなく、日本の資産として重要なんだと広く認知していただいたのは価値がある」
 「医療支援に出向いたトヨタ社員もTPSが異業種で通用したことを実感でき、非常にありがたかった。社内では、社長が音頭を取り、在宅勤務など働き方が変わった事技系(総合職)職場にTPSを広げる取り組みが始まった」
 ―コロナは、モビリティサービスの将来にどう影響するか。
 「人やものの移動はなくならない。ライドシェア(相乗り)の需要が半減して、食事や物を運ぶサービスなどがより活発になっている。貨客混載サービスに焦点が当たるかもしれない。安全面も交通事故というだけではなく、感染防止も重視されてくるかもしれない。在宅勤務が家でできない場合、車の中でWi―Fiやパソコンを置ける環境も必要になる。看護師が検査に出向くなど医療向け移動サービスや、開発中の自動運転車『イーパレット』で、店に来てもらう発想のサービスも可能性がある。危機は危機だが、社会に貢献するチャンスが来ている」

友山 茂樹氏(ともやま・しげき) 群馬大卒、81年トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。常務役員、専務役員、コネクティッドカンパニー・プレジデント、ガズーレーシングカンパニー・プレジデント、副社長などを経て、20年4月から現職。

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