<トヨタウォーズ7>アフリカの「命」を背負って大地を駆けるランドクルーザー

2020年11月18日 18時00分

◆国連機関で5000台以上…無償で部品提供も

 土煙が舞い上がる岩肌むき出しのアフリカの道を、トヨタ自動車のオフロード車「ランドクルーザー」が走る。あちこちに穴があり、木が倒れていることも。野生動物に遭遇することもあり、運転は気が抜けない。
 荷台には食料や医薬品が詰まっている。難民キャンプに向かう国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の車だ。
 「ランクルでなければ行けない奥地もある。その車が止まれば、食料が止まり、ワクチンが止まり、人の命に関わる。命を運んでいるようなもの」。昨年、トヨタからアフリカ営業業務を移管された豊田通商のアフリカ本部COO(最高執行責任者)、今井斗志光(55)が、現地事情を語る。
 1日2ドル以下で暮らす最貧困層が4億人ほどいるとされるアフリカでは、国連や赤十字といった人道支援組織が物資を運ぶ。多くの場合、ランクルや「ハイラックス」といったトヨタ車が使われ、国連機関だけで5000台以上が走る。
 コロナ禍でアフリカ各国は、外出制限を発動した。あおりを受け、トヨタの新車販売は4月、前年比で7割減。ただその間も、600あるトヨタ販売店は全土で営業を続け、修理や部品交換の要請に応えた。
 「車が売れず苦しいが、人道支援のような必要不可欠な仕事は続けなければいけない」。アフリカの地で、トヨタ車は走り続けなければいけない責務を負うと自覚するからだ。

アフリカの未舗装路を走るランドクルーザー(上)と感染対策をしてハイラックスを整備する販売店のスタッフ(中)。左下は「ウィズ・アフリカ フォー・アフリカ」の理念で東京からオンラインで現地状況を注視する今井=画像はコラージュ

 そんな状況を東京から見守っていた今井は4月末、トヨタ社長の豊田章男(64)から突然、電話を受けた。
 「アフリカでは命に関わるライフラインを支えるトヨタの車がたくさんある。医療従事者に限らず、少し間口を広げた支援ができないかな」
 支援拡充に向け、すぐ現地などの関係者と話し合った。フィルター類やブレーキパッドなどを国連機関に無償提供する活動を7月から始めた。
 地域に根差した事業を展開してきた豊田通商も、今回アフリカの全54カ国の現場で、消毒液の生産など自主的な支援を展開した。
 今井は、アフリカ事業に30年以上かかわる経験から、コロナ禍のアフリカ社会の苦境を1990年代と重ね合わせる。「各地で社会主義政権が倒れて内戦が勃発し、社会全体が崩壊した。今も感染拡大で経済活動が停滞し失業が増え、貧困が拡大し、社会崩壊するリスクは高い」
 だからこそ「命を運ぶ」活動を支える必要がある。「町いちばん」のスローガンのもと、地域で最も信頼されるブランドを目指し、60年代から車を販売してきたトヨタへの期待は高い。
 「アフリカでのトヨタ車は、命を預けるパートナー。もともと信用が高い中で、信頼を裏切らないよう一貫してやる」と今井。命を支える闘いが、さらなる信頼につながっていく。 (敬称略)

◆世界の危機に「あなたのために」の視点で

コロナ対策について語るトヨタ自動車の大塚友美フェロー=名古屋市内で

 新型コロナウイルス感染拡大に対し、トヨタグループによる支援活動「ココロハコブプロジェクト」を取りまとめたトヨタ・サステナビリティ推進室、大塚友美フェロー(51)に、活動を通じて感じたこと、いまトヨタに必要なことを聞いた。
 ―重視した考え方は。
 「新型コロナは国難であり、世界で共通して直面する危機。ユー(あなた)のために、という視点が当たり前に芽生えた。強くなったトヨタがしっかりしなきゃという責任感もある」
 ―普段との違いは。
 「通常時なら、これってトヨタがやるべきことなのか、(求められているのは)大した技術じゃないよねとか、議論だけして時間だけがかかっていたかもしれない。でも今回は技術を誇るためにやっているわけではなく、生活者の視点で何かお役に立てることがないか考え、実行していった」
 ―トヨタのサステイナビリティ(持続可能性)を推進する立場だ。
 「放置した課題が現実になった時のリスクの大きさが、コロナ禍で明らかになった。『CASE』の時代を生き抜くため、私たち自身が変革して『モビリティカンパニー』に変わるのはリスクだが、お客さまに多様な方法で幸せをお届けするチャンスでもある」
 ―ダイバーシティー(多様性)に対する考えは。
 「多様な人が生き生き働くことが、会社のサステイナビリティに関係する。異質な人から学べば、自分の価値観も変わる。今回は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対する当事者意識も高まった。その達成には、相手のことを想像力を持って考えることが大事。普段からいろいろな人に接し、生活者目線で考える方が良い、という風土に会社を変えていきたい」

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