柳美里さんの「JR上野駅公園口」が全米図書賞 南相馬移住「居場所ない人のため書いてきた」

2020年11月19日 22時15分
 米国で最も権威ある文学賞の一つ、全米図書賞が18日(日本時間19日朝)に発表され、翻訳文学部門で柳美里(ゆうみり)さん(52)の「JR上野駅公園口」の受賞が決まった。東日本大震災の後に移住した福島県南相馬市からオンライン記者会見に臨んだ柳さんは「南相馬の方々の体験が自分の中で地層となり、そこから生まれたのがこの作品。受賞が、今も苦労されている地元の皆さんへのプレゼントになれば」と喜びを述べた。(樋口薫)

◆ステイホームに「ホームない人を思う人、どれくらいいたか」

 受賞作は、南相馬市で生まれ、東京で出稼ぎ生活を送った末に上野公園でホームレスとなる男性の生涯を描いた。日本では2014年に刊行されたが、国内の文学賞などは受賞していない。「一貫して、居場所のない人のために書いてきた」という柳さんは「新型コロナウイルスの感染拡大で『ステイホーム』という言葉が標語となったとき、ホームがない人に思いを致した人がどれくらいいただろうか」と指摘。「コロナで居場所のない人が隅に追いやられたという問題が、他国の人にも共感を持ってもらえたのでは」と、評価の理由を分析した。

全米図書賞受賞を喜ぶ柳美里さん(右)と翻訳者のモーガン・ジャイルズさん(同賞のオンライン中継から)

 かつては自身の体験を基にした作品を多く執筆してきた柳さんだが、震災直後から南相馬市の人々と深く関わるうちに「自分の中に他者が流れ込んできた」という。「この場所で暮らしながら立ち上がる物語を書いていきたい」と語った。
 柳さんは横浜市出身。1997年に「家族シネマ」で芥川賞を受賞。現在は南相馬市で書店を営みながら執筆活動を続ける。

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