菅首相「最大限の警戒」も対策は「静かなマスク会食」だけ? GoTo見直しの言及なし

2020年11月20日 10時28分
<新型コロナ再拡大(6)>

東京・浅草の仲見世通りの店舗に掲示された「Go To トラベル」のポスター

◆予約キャンセル再び増加

 「予約キャンセルが増えてきた。旅行に行きたいという思いがあっても、不安はぬぐえないようです」
 全室に露天風呂を備えた神奈川県箱根町の旅館「箱根藍瑠あいる」の渡辺健支配人(35)はそう不安がる。気掛かりは新型コロナウイルス感染者の急増。そして、「Go To トラベル」の先行き。「休止になれば、宿泊代を割高に感じるだけではない。感染不安も増す。再び箱根から人がいなくなるのでは」
 菅義偉首相は19日、記者団に対し、「最大限の警戒状況にある」と強調した。Go To 事業の休止、人の往来や外出自粛への言及はなく、「皆さん、『静かなマスク会食』をぜひお願いしたい」と呼び掛けるだけにとどめた。
 高級ホテル・旅館、大手の旅行会社に恩恵が偏っているという批判はあるものの、5月の宿泊者数が昨年比で8割以上落ち込んだホテル業界は、Go To トラベルの効果で持ち直してきた。
 観光庁によると、7月22日~10月末の利用者は約4000万人で、国の支援額を含めて約4200億円の消費があったとみられる。予算総額は約1兆3500億円。来年1月末の販売終了を予定しているが、政府は延長も検討している。

◆「感染広げた」批判も

 一方で、「(感染者増の)きっかけになったことは間違いないと思っている」と日本医師会の中川俊男会長が18日の記者会見で指摘したように、往来が活発になったことで、感染を広げたという批判もある。
 「感染が急拡大すれば事業を止めるのは当然だが、止めれば活動は萎縮し、地域経済の停滞は免れない。政府は難しい判断を迫られることになる」
 そう話すのは、独立行政法人・経済産業研究所の中田大悟さん(公共経済学)。「観光は飲食や宿泊、クリーニングなど裾野が広く、雇用の受け皿となってきた」と指摘する。「今は二兎にとを追っている状態。『ここまでは大丈夫』と国が正しい情報を提供すれば、人々は正しくアクセルとブレーキを踏み分けるはずだ」と話した。

◆「生き残るため続けて」

 宿泊客の9割を外国人客が占めた東京都台東区谷中にある「さわの屋旅館」。宿泊客は3~4割と苦境が続くが、現在はGo To トラベルを利用して宿泊する都民が増えて、何とか耐えているという。経営する澤功さん(83)は「英国やフィンランドのなじみ客から来春の予約が入っている。つぶれていたら彼らはがっかりする。生き残るためにもトラベルは続けてもらいたい」と話している。
 加藤勝信官房長官は19日の記者会見で、「基本的な考え方に何ら変更ない」と継続の方針をあらためて示した。だが、全国の感染者は連日、2000人を超えている。20日に会合を開く政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、感染拡大地域への移動自粛やGo To トラベルの一部地域の除外を提言することも検討している。=おわり(この連載は、土屋晴康、原田遼、藤川大樹、井上靖史、小坂井文彦が担当しました)

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