玉三郎、神話の世界で締めくくり 歌舞伎座・十二月大歌舞伎

2020年11月20日 07時48分
 東京・歌舞伎座の「十二月大歌舞伎」第四部で、坂東玉三郎(70)=写真=が日本神話を題材にした「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」(近松門左衛門作)に出演する。今月8日の取材で、コロナ禍で世界中が打撃を受けている現状を「いろんなことが露呈した年」ととらえながら、「こうした中で劇場に来てくださるお客さまはありがたい。来てよかったと思っていただけるものをお見せできたら」と、締めくくりの舞台に意欲をみせた。 (山岸利行)
 二月に歌舞伎座に出演した後はコロナ禍で舞台の幕が上がらない日々が続いたが、慌てることなく自宅で稽古を重ねた。「この年齢になると、舞台に立てないということでバタバタしない」と達観、九月の歌舞伎座に立った時は「(客席は)ガラガラと思っていましたが、想像していたよりよかった」と率直に明かす。「(休演の)最中はものすごく長く感じたが、過ぎてしまえばあっという間」と振り返る。
 九、十月の歌舞伎座では一人で舞台に立ち、映像を交えたり、舞台裏を見せたりするなどの趣向を凝らした。
 十二月は「日本振袖始」の岩長姫(いわながひめ)実は八岐大蛇(やまたのおろち)役で、尾上菊之助(43)、中村梅枝(32)と共演する。全五段の物語だが、五段目の「大蛇退治」を舞踊劇にした演目だ。
 出雲の国(島根県)での話。稲田姫(梅枝)が簸(ひ)の川に棲(す)む八岐大蛇の人身御供(ひとみごくう)となっていた。夜更けになり、大蛇の化身である岩長姫が現れ、好物の酒を飲み干し、稲田姫も飲み込む。そこへ、素(す)盞嗚尊(さのおのみこと)(菊之助)がやって来て…。

「日本振袖始」で岩長姫実は八岐大蛇を演じる坂東玉三郎=松竹提供、撮影・篠山紀信

 今回の演目について「神話を歌舞伎にしたらどうなるかという世界」と話す。「女の姫が稲田姫を食べるという退廃的作風」ととらえ、「少ない登場人物だが、それぞれ(のキャラクター)が立っている」という。共演者とは接触を避け、個別の稽古となるが、「(菊之助、梅枝の)二人とも勉強家なので大丈夫」と不安はない。
 舞台が再開された八月以降、歌舞伎座では四部制の公演が続く。最後の第四部は午後七時すぎの開演だが、「夜だから来られるお客さまもいらっしゃる。来てくださる方のために、心を込めてやりたい」。
 新型コロナウイルスの感染状況をにらみながらの舞台だが、「いずれは終息する」と大きく構える。「今まで丸く収まっていたものが、収まらなくなった」と今年を振り返り、「(舞台が)中止になっても慌てない。いただいたものを誠実にやるしかない」と現実と向き合う。
 現在、NHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」に正親町(おおぎまち)天皇役で出演中。主演の長谷川博己(43)の父親である学者(故人)とは古くからの知り合いだったといい、「まさか、あの学者の子どもが俳優だとは思わなかった」と明かす。大河を見た視聴者が歌舞伎につながれば、「それはそれで、うれしい」と笑顔を見せた。

◆十二月大歌舞伎

 ◇第一部(午前十一時開演)「四変化 弥生の花浅草祭」片岡愛之助、尾上松也。
 ◇第二部(午後一時三十分開演)「心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」中村七之助、市川中車、片岡亀蔵、市川猿弥。
 ◇第三部(午後四時開演)「傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 土佐将監閑居(とさのしょうげんかんきょ)の場」中村勘九郎、市川猿之助、片岡市蔵、中村梅花、市川団子、中村鶴松。
 ◇第四部(午後七時十五分開演)「日本振袖始 大蛇退治」坂東玉三郎、尾上菊之助、中村梅枝。
 公演は十二月一〜二十六日(八、十八日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000・489。

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