<トヨタウォーズ番外編2>コロナ感染、対策徹底し生産再開 世界各地に息づくトヨタの哲学とは

2020年11月20日 12時00分
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、トヨタ自動車の世界各地の現地法人は、その国の情勢に合わせて臨機応変に取り組んだ。中国に続いて感染拡大が早かった欧州での生産再開は、特に他地域のお手本になった。欧州本部のヨハン・ファン・ゼイル本部長(62)と村上晃彦副本部長(61)が、本紙インタビューに内幕を語り、「率先して社会に貢献するのがトヨタの哲学。西洋人の従業員にも根付いている」(ファン・ゼイル本部長)と明かした。

出勤時に体温をチェックしてフランスの工場に入る従業員ら

◆欧州販売、史上最大の落ち込み 在宅勤務は連絡密に

 ―欧州での経過は。
 ファン・ゼイル 「2月にイタリアで感染が広がると、部品供給に影響が出始めた。各国の外出制限を受け、3月半ばにフランスの工場を止めた後、数日で全工場を停止。ディーラーのネットワークも止まり、4月は販売が8割減った。記録がある中で史上最大の落ち込みだった」

ヨハンファンゼイル欧州本部長

 ―従業員はどう動いた。
 ファン・ゼイル 「どう社会に貢献できるか率先して考えた。まずフランス工場が、医療現場向けフェースシールドを開発し、計7000個を寄付した。マスクも40万枚生産した。英国ではタクシードライバーと客を隔てる仕切りを作り、世界中の工場に展開された。このように率先して社会に貢献するのが、トヨタの哲学。日本文化の一部でもあるだろうが、西洋人の従業員にも根付いている」
 村上 「こうしたトヨタの文化はとても強い。各国を訪問した印象では、イタリアのディーラーは、本当にトヨタの文化を理解している。長い歴史で、先輩たちが努力してきたたまものだ」
 ―危機への対処は。
 ファン・ゼイル「最も大事なのはコミュニケーション。事務部門や技術者を含め3000人が在宅勤務になったが、連絡を密にすれば、誰もパニックに陥ることはない。最初に従業員に対してはっきりさせたのは、彼らを犠牲にはしないということ。ワンチームで、強い方向性を持ってこの困難を克服できると伝えた。これがきっと彼らに強さを与えた」

◆コロナ危機下での変革「継続的な『カイゼン』と同じ」

 ―生産再開への道は。
 ファン・ゼイル「工場の再開は、(欧州では)4月下旬のフランスが最初。大きな決断だったが、労働組合や当局に説明しながら進めた。現場では1.5メートルの距離を取った仕事が求められたので、ラインを調整し、少人数で生産できるようにした。消毒にも多くの時間を要した。最初の3日間、新しい働き方に慣れることに時間がかかり、多く生産できなかったが、(現場観察を徹底する)『現地現物』でプロセスが動くことを確認した。それが安全の哲学。マクロン大統領から、良い仕事をしたと称賛され、再開に向けたアイデアは(フランスの)他の製造業者に活用された」
 村上「再開数日前、経営陣も含め全員が工場で準備を始めた。すべてのプロセスをチェックし、安全を確認し決断した」

欧州本部の村上晃彦副本部長

 ―ディーラーの対応は。
 ファン・ゼイル「外出制限が出てから、素早くオンラインで車を買えるようにした。店舗再開前には、ネットで販促キャンペーンも展開。(トヨタの金融子会社の)トヨタファイナンシャルサービスの支援を受けるディーラーもあった」
 ―コロナへの対峙とは。
 ファン・ゼイル「変革することでこの危機を克服できる」
 村上「この危機がいつ終わるか分からないが、学び続けることはできる。毎日、毎週、毎月、その学びを蓄積していける。これは継続的な『カイゼン』と同じ。トヨタはいま学びを続けて、変わろうとしている」=おわり

ヨハン・ファン・ゼイル 南アフリカ・ポチェフストルーム大卒、93年南アフリカトヨタ自動車入社。02年社長。トヨタ自動車常務役員、アフリカ本部長などを経て、15年4月から欧州本部長兼トヨタモーターヨーロッパ社長。

むらかみ・のぶひこ 一橋大卒、82年トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。常務役員、富士重工業専務執行役員、トヨタ専務役員などを経て、18年1月から東アジア・オセアニア・中東本部長、19年1月から欧州本部副本部長を兼務。

(この連載は長田弘己、鈴木龍司、曽布川剛が担当しました)

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