<ふくしまの10年・元牛飼い2人の軌跡>(10)ヒツジ飼育放牧禁止の壁

2020年11月21日 06時35分

相馬秀一さんは、牧草販売のほか、ヒツジの繁殖事業も始めた=南相馬市で

 担い手のいない農地を活用し、大規模な飼料生産に取り組む南相馬市小高区の元酪農家、相馬秀一さん(44)は、新たにヒツジの飼育にも挑戦している。
 酪農の再開も考えたが、この地で復活できるか不安があり、牧草やコーンの生産が拡大しそちらが本業になった。そこで、「ヒツジは雑草もきれいに食べる。草刈りの手間が減るかも」と思いついた。
 二〇一七年五月、肉用種として広く飼われているサフォーク種を三頭導入。その後十頭を追加し、現在は繁殖して四十頭に増えた。
 相馬さんの頭の中には、広大な牧草地が広がり、のんびりヒツジが草をはみ、低廉なラムやマトンを生産する新たな相馬牧場の情景が広がる。しかし、頭の痛い問題に突き当たり、足踏み中だ。
 その問題とは、肉用の家畜全般で「当面、放牧は行わない」との県の方針だ。
 県畜産課に取材すると「特にヒツジは根に近い部分まで食べるため、放射性セシウムが肉に移行しやすい。不検出の肉を消費者に届けるため、管理された飼料のみによる生産を続ける」との答えだった。
 「仕方ないですね。まずは飼育頭数を増やし、市場に参入できる規模までもっていきますよ」。原発事故被災地での相馬さんの挑戦は続く。
 (山川剛史が担当しました)
 ◇新シリーズは24日から。ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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