<食卓ものがたり>「医者いらず」地域の宝 キダチアロエ(静岡県下田市)

2020年11月21日 07時25分

生家の玄関先にあるキダチアロエを見る藤井和弘さん=静岡県下田市で

 黒船来航で知られる静岡県下田市。伊豆半島の南東に位置し、青い海に沿って白砂の浜辺が連なる。伊豆最大の海水浴場がある白浜地区では、キダチアロエが道端に自生。民家の庭先にも植えられていた。
 さまざまな効能で知られ、別名「医者いらず」。日本で最も多い品種だが、鉢植えのこぢんまりとしたイメージとは違う。伸び伸び成長して幹は太く、高さが三メートルを超えるものも。生で食べると苦いが「胃がむかつくからと葉をむしって食べたり、焼酎に漬けて寝酒にしたり。『救急箱』として重宝されてきた」と農家の藤井和弘さん(55)。アロエを食品として生産し、生葉を搾った原液や、粉末を練り込んだあめなど加工品の販売も手掛ける。
 キダチアロエは南アフリカ原産の多肉植物。五百年ほど前に海路で日本に伝わったと考えられる。太平洋側に分布するが、自生する場所は限られる。暖かい海のおかげで気温が安定し、雪や霜もほとんどない伊豆は「アロエ栽培に最適」。キダチアロエの出荷量は静岡県が全国一で、うち八割を伊豆半島が占める。
 長く住民の健康を守ってきたキダチアロエに光が当たったのは三十五年前。ふるさと創生事業の一環で、白浜地区の自生地に全長約一キロの遊歩道が整備され、「アロエの里」と名付けられた。ミカン農家だった藤井さんの両親は、この動きに乗り、地場産品として乾燥葉を使ったお茶を開発、栽培にも乗り出した。
 地元を離れて会社員をしていた藤井さんは二十二年前に家業を継ぎ、通信販売で販路を広げた。小高い山の斜面の農園でキダチアロエを中心に栽培し、年間約二十トンを出荷する。「健康野菜だから」と農薬を使わず育てるのがこだわりだ。
 ただ、購入するのは便秘の改善などに期待する中高年が中心だ。若い世代にも良さを知ってもらおうと、今後はパッケージのデザインを変えるなどしてアピールすることを目指す。
 文・写真/小中寿美

◆味わう

 藤井さんはアロエの使い方、栽培のポイントなどを運営する日本アロエセンターのホームページで紹介している。料理の基本は刺し身といい、母静子さん(78)が太い葉の皮をそいで作ってくれた=写真。確かに苦いが、酢みそを付けたり、軽くゆがいたりすると食べやすい。食品や化粧品などの製品は道の駅などでも販売している。原液は720ミリリットルで2160円。
 キダチアロエは12〜1月が開花時期で、先端に約400の赤い花を付ける。アロエの里では11月28日から1月7日まで「アロエの花まつり」が開かれ、売店や休憩所が設けられる。

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