[なに料理?] 三重県四日市市 生川朝子(73)

2020年11月22日 07時35分

◆わたしの絵本

イラスト・まここっと

◆300文字小説 川又千秋監修

[自転車] 名古屋市守山区・会社員・47歳 藤沢法彦

 今日、大人用の自転車に買い替えた。
 車輪が二回りほど大きい。ただそれだけのことなのに、小学校入学時に買ってもらった自転車とは別の乗り物くらい、ちがっていた。
 ペダルをこぎ出すたびに、グン! とスピードが上がる。
 風の音を全身で感じ、景色が飛び去っていく。
 最近、学校の勉強が急に難しくなった。今まで何も考えずにバカなことを言い合っていた友達にも気を使うようになった。
 「それが大人になるってこと」
 お母さんはそう言っていたが、だったら大人なんてなりたくないと思っていた。だけど、今日、大人になるのもいいかもしれないと少しだけ思えた。
 チリン…と控えめにベルを鳴らし、大人のスピードで僕は走り続けた。

<評> 子どもから大人へのステップアップを全身で体感! 新しい自転車のペダルを力いっぱい踏み込んで、新しい世界へ走り出すなんて、素晴らしい瞬間です。次に待ち受けているのは、どんなステップ?

[部屋] 東京都八王子市・主婦・61歳 小川ひろ子

 無性に押し入れを片付けたくなり、ガラクタと格闘。だいぶスッキリしてきた頃、奥に小さな扉が見えた。
 はいつくばって、そばに行き、そっと押し開ける。
 そこには、どこか懐かしい感じのする明るい部屋があった。
 入ると、自分が昔好きだった物が、そこかしこに置かれていた。
 「ああ、これはとても大事にしていたっけ。こんな物、作るの好きだったな」
 思い出に浸っている途中で、目が覚めた。いつもの部屋のベッドの上。
 「なんだ、夢か」
 すっかり忘れていた好きだったこと。忙しさにかまけて閉じてしまった大切な記憶の扉。
 「そうだな…余計な物は少し片付けて、あの部屋から、お気に入りを取ってこようか」

<評> 誰でも、心の奥底に、こんな小部屋を隠し持っているはず。中にしまってあるのは、決して断捨離できない宝物ばかり。夢の合間に扉を開き、一人でゆったり過ごしたい、居心地満点の異空間。

関連キーワード

PR情報