24時間、店員いない!? その名も「ムジンノフクヤ」 洋服選びの気まずさゼロ

2020年11月23日 07時10分

24時間無人で営業する中野区の「ムジンノフクヤ」

 店で洋服を選んでいる時に店員から声をかけられ、気まずくなる−。そんな“買い物あるある”が絶対に起きない古着店が中野区にある。24時間、店員のいない、その名も「ムジンノフクヤ」。目指したのは「日本一接客のない服屋」だ。

運営会社代表の平野泰敬さん

 西武新宿線野方駅から歩いて二〜三分。八月にオープンしたムジンノフクヤは商店街の一角にある。二十五平方メートルほどのこぢんまりとした店内には、約三百点の服が並ぶ。白のハンガーが五百円、黒は千五百円など、服の値段はハンガーで一目でわかる。客は欲しい服の代金を店内の券売機に入れて、持ち帰る仕組みだ。
 商品は百貨店やアウトレットなどに出店する国内ブランドの古着や新古品が中心。数万円する上着が数千円で売られていることもあり、運営会社の代表平野泰敬(やすのり)さん(34)は「掘り出し物はかなりありますよ」とにこり。二〜三日に一回、商品が補充されるので、足を運ぶたびに新しい商品に出合う可能性も高い。店内にあるノートには「すごく良いアイデア」「質がいい物ばかり」と客からの好意的なコメントが並ぶ。

値段はハンガーの色で表示

 でも、防犯対策は大丈夫なのか? 同店では店内に三台の防犯カメラを設置し、客の入退店がわかるようになっている。二回ほど万引被害にあったが、いずれも犯人は特定された。
 マッサージ店の経営などを手がけていた平野さんが無人の古着店を思い付いたのは、一年ほど前。知り合いの会社経営者から国内ブランドの古着を安く仕入れるルートを紹介してもらったのがきっかけだ。
 もともと洋服店で店員に声をかけられるのが苦手なタイプ。日ごろから「声かけがない方がゆっくり選べるのに」と感じていた。海外では、米ネット通販大手アマゾンがレジのないコンビニ店をオープンさせるなど、無人販売が大きな注目を集めていた。「ネット通販は送料もかかるし、誰もが参入できて埋もれてしまう。無人なら人件費を抑え、商品の価格をさらに安くできる」。新型コロナウイルスの感染拡大で、対面や接触を避ける生活様式が広まったことも後押しした。

券売機に代金を入れ、支払い完了

 とはいえ、アパレル関連の事業は未経験。オープン後に店内に置いたノートには、「更衣室にハンガーをかけるピンがほしい」「サイズごとに並べて」「試着する時のフェースカバーがほしい」などの指摘もあった。平野さんはそのひと言ひと言にコメントを書き込み、指摘されたことを改善してきた。
 今、最も力を入れるのは仕入れた古着のリメークだ。二十〜四十代のデザイナー三人に仕入れた古着を提供。トレンドを反映させた新しい服に生まれ変わらせて、販売している。「安いだけでなく、付加価値のある服も売りたい。『リメークといえばムジンノフクヤ』と言われるようにしたい」と話す。

古着をリメークしたオリジナルの服

 ノートには、在庫にないデザインの服やサイズを求める声も書かれており、平野さんは要望をデザイナーに伝えて、作ってもらうこともある。「自分だけでは思い付かない考えや改善点が書かれている。お客さまの要望を取り入れて、理想の店にしていきたい」と平野さん。日本一接客はないけれど、ノートを介して客との密なコミュニケーションは生まれていた。
 文・西川正志/写真・由木直子
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード

PR情報

TOKYO発の新着

記事一覧