<ひと物語>自然の味わい 伝えたい 藍染め体験を出前 新島大吾さん

2020年11月23日 07時43分

「体験してもらえば藍染めの良さを分かってもらえる」と話す新島大吾さん=いずれも羽生市の武州中島紺屋で

 「藍で染めると丈夫になり、汚れも目立ちにくい。ヘビ避けにもなると言われ、昔の人が着ていたんだよ」。行田市立南小学校で今月あった体験学習会。羽生市の藍染め業者「武州中島紺屋」の県認定伝統工芸士、新島大吾さん(44)は藍染めした手ぬぐいとシャツに身を包み、子どもたちに藍染めの歴史と特徴を紹介した。
 これまで多くの子どもたちに魅力を伝えてきた。しかし、今年は状況が一変。新型コロナウイルスの影響で、紺屋で受け入れていた小学生の体験学習の予約が三月以降、いったん全てキャンセルになった。
 出前の体験学習会は、店に来るのが難しければ、こちらから出向こうと企画した。事前に四十五リットルのバケツ六個と染料を学校に運び、当日は早朝から準備。ハンカチの染色を体験してもらった。コロナ禍でも徐々に依頼は増えている。活動の原動力は「子どもたちに藍染めを知ってもらいたい」という思いだ。
 深谷市出身の新島さんも、子どもの頃は藍染めについてよく知らなかった。きっかけは服飾を学ぶために進んだ東京の専門学校で、武州中島紺屋の四代目中島安夫さん(故人)に出会ったことだ。ある日、講師として来校した中島さんが授業で藍染めを紹介。たいていの染料は湯で煮て色を付けるのに、藍染めは発酵の力を使う。自然の神秘に驚き、興味を持った。
 中島さんの紺屋を訪れて藍染めを体験。染め重ねると、より濃い藍色になる一方で、擦れたり洗ったりして色落ちしても味わい深い色になる。さらなる発見に魅了された。
 専門学校卒業後、一度はバッグメーカーに勤めたが、職人の道を志す意志を固めて中島さんに弟子入り。中島さんは作業は見せてくれるが、手取り足取り教えてくれるわけではなかった。藍染めは自然相手の技術。気象条件によって加える原料の量や温度などを調整する。経験して覚えるしかなく、自分で答えを探す努力を重ね、二〇一二年に伝統工芸士に認定された。

藍染めの染料を混ぜる新島さん

 ただ、業界の先行きは厳しい。明治の頃までは県北部に多くの藍染め業者があったが、安価で大量生産が可能な化学染料に押されて業者は減少。羽生市内では四業者が残るのみだ。それでも自然の素材を使い、職人の手仕事で生み出される製品の価値は見直されつつある。
 新島さんは「体験してもらえれば藍染めの良さを知ってもらえる」と言い切る。自らが体験した感動が、自信の根拠だ。藍染めを次代に残していくために、これからも技術を磨きつつ、体験会の開催にも力を注ぐ。 (寺本康弘)
<にいじま・だいご> 深谷市出身。熊谷高校卒業後、文化服装学院(東京)に進学。バッグメーカー勤務を経て武州中島紺屋(羽生市)に入った。2012年、県の伝統工芸士に認定。紺屋ではオーダーメードの染色や体験も受け付けている。問い合わせは、同紺屋=電048(561)3358=へ(平日午前9時〜午後5時)。

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