入管のコロナ対策で仮放免の外国人 路頭に迷い保護、働けず帰国便も減少

2020年11月24日 08時18分
 新型コロナウイルス対策で「密」を避けるために、出入国在留管理庁(入管)の収容施設から一時的に解放(仮放免)された多くの外国人が生活に困窮していることが分かった。仮放免された外国人は労働が禁止されている上、航空便の減少で帰国もできないためだ。路頭に迷う多くの外国人が市民団体に保護されている。(山田晃史、写真も)

就労も帰国もできない状況となり、「生きるため、帰国準備のために働かせてほしい」と願うベトナム人男性=東京都港区で

 「働くことができず、国にも帰れない。どうすればいいんだ」。技能実習生だったベトナム人男性(26)は頭を抱える。
 暴力が原因で実習先から失踪。不法に働いていたが、昨年末に仕事がなくなり4月に名古屋市の入管に出頭した。しかし、その日のうちに施設から出された。ただ「不法滞在」のため働けず、長野県や愛知県などの友人宅を約4カ月間、渡り歩いてしのいだ。

◆警察の職務質問で仕事をクビに

 「このままでは生きていけない。帰国用のチケット代も必要だ」。ベトナムへの航空便数は激減しており、航空券は20万円ほどに高騰している。限界を感じた9月、静岡県で太陽光発電の設備を備え付ける仕事を始めた。だが2週間後、警察から職務質問を受け、不法就労の発覚を恐れた会社から「もう来るな」と言われた。今は外国人を支援するNPO法人「日越ともいき支援会」(東京)に保護されている。
 支援会の吉水慈豊じほう代表によると、保護した外国人の中では、住む場所もない状態で入管施設を出された元技能実習生が増えているという。10月下旬に福岡市の施設から出された男性(29)は取材に「金も行く所もないのになぜこんなことをするのか」と当惑を隠さなかった。
 仮放免は本来、在留を認められなかった外国人らが帰国の準備をするための措置。だが新型コロナの感染拡大が本格化した4月は563人と、昨年の月平均(148人)の3・8倍に上った。入管は5月以降の人数を公表していないが、担当者は「感染が収束しておらず、5月以降も積極的な仮放免を続けている」と増加を認めた。

◆生活保護、健康保険も適用外

 仮放免中は、政府の外国人労働者の支援策が適用されず、生活保護は申請できない。健康保険も適用されず、支援会に保護された人の中には入院費用が120万円に達し、病院を抜け出した人もいるという。
 ドイツでは、日本の仮放免に当たる状況で施設を出てからでも、数カ月たてば就労を認められる。英国は頼る人がいない場合、国が住居を提供する。
 日本政府の対応について、外国人の人権に詳しい名城大の近藤敦教授は「労働を認めず、生活支援もしない。人をホームレスの状態に置くことは品位を傷つける扱いで、日本が批准している国際人権規約違反になる」と指摘する。

◆入管、行き場なし「想定せず」

 出入国在留管理庁の担当者は本紙の取材に「仮放免は本人が希望していることを前提としている。住居を指定した上で許可書を出しており、行き場がなくなることは想定していない」と説明した。困窮している外国人が相次いでいる状況には「経緯は把握していない。行き場がなくなった場合は、まず管轄する入管に相談してほしい」と話した。

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