ばらまかれるコロナウイルス…感染急増で崩壊迫る医療現場…危機感ない政府にいら立ち

2020年11月26日 06時00分
 新型コロナウイルス感染の再拡大で、全国各地の医療提供体制が崩壊の危機に直面している―。25日の記者会見でそう語った日本医師会(日医)の中川俊男会長の表情は険しかった。厚生労働省に助言をする専門家組織「アドバイザリーボード」も24日、「このままの状況が続けば、助けられる命を助けられなくなる」と指摘した。医師らは政権幹部が「強い危機感」を共有しないことにいら立ちを見せている。(井上靖史、藤川大樹、原田遼、土屋晴康)

◆病床も医療従事者も足りなくなる

 病床は埋まり始めている。重症者は24日現在、全国で376人で、1週間前と比べて100人増えた。
 感染ピーク時に受け入れ可能な病床数からすると余裕はあるようにみえるが、ピーク時の病床数は、都道府県が医療機関から聞き取った受け入れ可能な最大ベッド数を足したもの。いわば「目標値」だ。
 座長の脇田隆字たかじ・国立感染症研究所長は24日の記者会見で「病床が箱として準備されても、そこには医師や看護師が必要だ。そういった人たちを簡単に増やせるわけではない」と強調した。日本医師会の釜萢かまやつ敏常任理事も「これ以上の病床を用意するのはとても無理という感じ」と語った。

◆東京が一番大変

 「病床の逼迫ひっぱくは東京が一番大変」。専門家組織のメンバーの一人はそう話した。東京都の重症者用病床は150床あり、使用率は4割弱だが、都立駒込病院の今村顕史医師は24日の専門家組織の会合で「ベッドがあっても対応するマンパワーの問題で、いっぱいまでは受け入れられない」などと説明したという。
 都福祉保健局の担当者に確認すると、重症者が少しずつ増えていけば対処は可能だが「一度にとなると難しい」と説明した。1日に20人、30人と重症者が増えていけば、受け入れられなくなる可能性がある。現在、軽症者はホテルや自宅療養となり、入院するのは中等症以上で、1人の患者をみる負担が重くなっている。
 日医の中川会長は25日の記者会見で「コロナ患者を受け入れるために、脳卒中や心筋梗塞など、他の疾患の受け入れが困難になりつつある」と話した。

◆「GoTo調整なんてしている暇ない」

 医師ら専門家と政府の温度差は大きい。24日の専門家組織の会合後、メンバーの1人は「政府のいろいろな方に、非常に強い危機感がちっとも伝わらない。悲痛な感じ」と話した。2週間、3週間後の医療体制を維持できる見通しが立たないという。
 「ピンポイントでこれをやれば、感染拡大が止まるという状況ではない。ウイルスが地域にばらまかれている」と感じている。「国と知事がGo To トラベルで調整なんてやっている暇はない。移動制限が必要だし、飲食店の営業時間短縮を強力にやらないといけない」と訴えた。

関連キーワード

PR情報