万引きは捕まえずに防げ!! 怪しい動き AI大魔神が見ているゾ…

2020年11月26日 07時13分

スーパーマーケットを模した港区のショールームに立つ山内三郎代表。後ろのカメラがAIと接続し、不審者情報を伝える

 スーパーマーケットや書店などで後を絶たない万引被害。経営者からは悲鳴が上がる。そこで人工知能(AI)を活用した万引防止のシステムが登場した。リアルタイムに不審人物をとらえるが、ミソは「捕まえない」ことにあった。
 万引を未然に防ぐ「AI大魔神」は、港区のIT会社「アースアイズ」=山内三郎代表(55)=が開発。NTT東日本とともに実際の店舗に導入している。
 AIに万引を疑わせる行為として約二百の情報を事前にインプット。監視カメラとAIを搭載したサーバーが接続されており、疑わしい動きがあると検出される(システムの流れはイラスト参照)。
 山内代表は神奈川県出身。早稲田大卒業後、会社勤務を経て親族の経営する警備会社に入社。万引対策を専門とする警備会社の設立を目指し、「自分がノウハウを得るためには現場で学ぶしかない」とスーパーの保安員として現場に立った。

AIが疑わしい行動をした人物をとらえると、赤い線でその人物を囲んでディスプレーに表示する

 不審な人物を見つけると、そっと警戒。商品を取った後、レジを通さず店外に出た直後に捕捉する。
 この一連の行動が大変だった。山内代表によると、万引しそうな人は来店客三百五十人に一人。その一人を見つけ、捕捉するストレスや万一間違っていた場合のダメージ…、警戒を続けていると、「商品を取った時は『ホッとした』」と打ち明ける。
 しかしこの気持ちに「おかしい」と気づいた。そこで、疑わしい人には声かけし、「捕まえない警備」に切り替えた。これが開発の原点だ。山内代表は「どんなにAIが発展しても道具にすぎない。大事なのは心。人が声かけし、犯罪を抑止できれば」と訴える。
 警視庁や業界団体などで構成する「東京万引き防止官民合同会議」が二〇一八年八月に発表した報告書によると、他の刑法犯罪に比べて万引の認知件数の減少傾向は緩やかで、特に高齢者の犯罪比率が増加した。
 万引は他の犯罪への入り口になりやすいともされ、同会議は未然の防止手段として店舗での「声かけ」を挙げる。一方、万引容疑者が「犯行をあきらめる原因」のトップも「声かけ」だ。
 山内代表によると、化粧品チェーン、ドラッグストアでは大魔神の導入後、被害金額が六割以上減り、警備員の人件費に比べて数倍のコスト削減になるという。業種・店舗に応じて不審者の動きはカスタマイズ可能。問い合わせは電03(3437)3686。

◆その気にさせない 明るく接客を

<万引に詳しい拓殖大政経学部の守山正教授(刑事法、犯罪学)の話> 1970年代以降、捕まえても再犯を繰り返す人が増え、刑罰が犯罪抑止につながらないという考えが広まった。そこで犯罪機会を与えないで犯罪予防を行う環境犯罪学が登場した。
 環境犯罪学によると、万引対策として、疑わしい客に「声かけ」し、心理的に抑止する▽簡単に盗めるような商品陳列をしない−など、「その気にさせない」取り組みが求められる。
 ただ店側が不審な人物だけに声をかけると、「なぜ自分だけ」と反発も予想され、逆にトラブルを招く恐れもある。店側のサービス面や評判も考慮し、他の客にも明るく声かけする方策が有効だろう。
 文と写真・加藤行平
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード

PR情報

TOKYO発の新着

記事一覧