内戦シリアのがれきに描かれた横田めぐみさん 拉致の悲しみは同じ

2020年11月26日 14時00分

15日、シリア北西部イドリブ県で、横田めぐみさんを描くアジーズ・アースマールさん=いずれもアジーズさん、カダールさん提供

 北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさん=失踪当時(13)=が消息を絶ってから43年となった今月15日、内戦の続くシリア北西部イドリブ県で、爆撃で破壊された建物の壁にめぐみさんと父滋さん=享年(87)=の絵が描かれた。シリアではアサド政権などによる反体制派住民の拉致被害が深刻で、地元の画家らが「拉致の悲しみと苦しみ、解放への希望を共有したい」と筆に願いを込めた。(カイロ・蜘手美鶴)
 イドリブ県北部バンシュ。崩れた建物の壁に、青空を背景にランドセルを背負うめぐみさんと、6月に死去した父滋さんの姿が描き出された。横には「自由」の文字。破壊し尽くされたがれきの中、そこだけ別空間のような鮮やかな色彩に包まれている。
 絵を描いたのは、画家アジーズ・アースマールさん(48)ら。「どんなに壊されても美しく再生できる」とのメッセージを伝えようと、相棒の写真家カダールさん(34)とともに、5年ほど前から内戦で壊された建物などに絵を描く活動を続けている。
 めぐみさんを描いたきっかけは、NPO法人「スタンド・ウィズ・シリア・ジャパン」(SSJ)理事長の山田一竹いっちくさん(27)の活動だ。山田さんは10月下旬、シリア人拉致被害者の解放を求め、居住地ベルリンでハンガーストライキを決行。アジーズさんが感銘を受け、「日本の拉致被害者を支えたい」と、めぐみさんを描くことを決めた。

がれきに描かれた横田めぐみさんと滋さんの絵

 シリアでは2011年以降、アサド政権や反政府勢力、イスラム過激派などが入り乱れた内戦が続く。混乱の中、政権側による反体制派住民の拉致が相次ぎ、シリア人権監視団(ロンドン)によると、12万人以上が連れ去られ、うち4万人以上が行方不明。監視団のアブドルラフマン所長は「拉致は『口を閉じろ』という脅しだ」と話す。
 拉致に政権側が関与しているため、家族らは解放に向けた手だてがないのが実情だ。アジーズさんのいとこも政権側に拘束されて行方が分からず、拉致や死が常に身近につきまとう。
 今回めぐみさんを描いたことを、アジーズさんは「拉致被害者家族の悲しみや痛みはよく分かるし、解放を願う気持ちも同じだ。その心に寄り添いたかった」と話す。自身の活動が壁画のきっかけになったことに、SSJの山田さんは「シリア人の痛みに寄り添ったことで、アジーズさんらが日本の拉致被害者に寄り添ってくれた。今度は、1人でも多くの日本人がシリアの痛みに寄り添ってほしい」と話している。

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