<お道具箱 万華鏡>三社祭のお面 踊りやすい作り

2020年11月27日 07時57分

「三社祭」の善(左)悪(右)のお面を持つ近藤真理子さん

 役者の体が鞠(まり)のように飛び跳ねる。歌舞伎舞踊「三社祭(さんじゃまつり)」は踊って、踊って踊り抜く、爽快な舞台。怪しげな雲から「善玉」「悪玉」が降りてきて二人の漁師に取り憑(つ)くという、なんともシュールな筋立てだ。
 小道具も奇妙なお面を用いる。人の顔ではなく、「善」と「悪」という文字がドーンと書かれている。「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉おやじのような不思議な姿で踊りまくる。
 なにしろ運動量が多いハードな舞踊である。コロナ禍で、マスクをつけて歩くだけでも息苦しいのに、窒息しないのだろうか。埼玉県越谷市にある藤浪小道具の倉庫で、実物を見てきた。
 出迎えてくれたのは、演劇課課長の近藤真理子さん。博物館の収蔵庫のように無数の道具がひしめく空間だが、どこに何があるか全て頭に入っているようで、あっという間にお面を出してくれた。「役者さんは、お面を口でくわえて固定しているんですよ」と、裏を見せてくれた。確かにビスケットのような突起がついている。ダイレクトに顔と直結させるなんて、すごい構造だ。それだけだと不安定なので、お面のふちに黒布をつけ、それを頬被(かぶ)りのように顎で結んでいるそうだ。さっとつけ、ぱっと外す。これなら、踊りの流れをさまたげない。
 善悪の文字の部分は、呼吸をしやすくするために、網になっていた。それでも相当スタミナがないと踊り通せないように感じた。
 ところで、歌舞伎ファンの間で今、この善悪をモチーフにしたイヤリングが人気を呼んでいる。販売元は、なんとご本家の藤浪小道具。コロナ禍に奮闘し、今夏、新規事業としてオリジナルグッズを製作販売するウェブショップを立ち上げた。その名も「フジナミヤ」。芝居好きの心をくすぐる商品ばかりで、新作も続々と登場している。 (伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

藤浪小道具が製作販売しているイヤリング

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