アフガンの米軍 撤収の判断は慎重に

2020年11月27日 08時17分
 任期切れ前の駆け込み的なレガシー(政治的遺産)づくりなのだろう。トランプ米大統領がアフガニスタンの駐留米軍の削減を決めた。兵力縮小が情勢不安定化を招かないか、懸念がぬぐえない。
 トランプ氏は「終わりのない戦争を終わらせる」と、アフガン、イラクからの軍撤収を公約に掲げてきた。
 今回の決定では、アフガンの駐留米軍は約四千五百人から約二千五百人に縮小する。併せてイラクの駐留米軍約三千人も約二千五百人に削減する。
 米ワトソン国際公共問題研究所によると、この二つの戦争で死亡した人は昨年の時点で、民間人、軍人含め約五十万人を数える。
 このうち米国の正規兵と民間軍事会社の職員を含む軍事関係者は約一万五千人が死亡した。米国の戦費も膨らみ、累計で六兆四千億ドルに達する。
 特に二〇〇一年の米中枢同時テロを発端にしたアフガン戦争は、米国にとってベトナム戦争を抜いて最も長い戦争だ。戦争終結は米国にとっても悲願だろう。
 米メディアによると、完全撤収にこだわるトランプ氏に国防総省が抵抗して今回の兵力削減に落ち着いたという。性急な撤収は「力の空白」を招き治安悪化につながりかねない、という不安は軍や政府ばかりでなく議会にも強い。
 アフガンでは今年二月、米国が反政府武装勢力タリバンとの間で和平合意に達したものの、アフガン政府とタリバンの和平交渉は難航し、戦闘は続いている。
 過激派組織「イスラム国」(IS)系の武装組織も勢力を広げている。治安回復には程遠い現状である。
 和平合意によれば、タリバンが暴力を抑制することを条件に、米軍は段階的に撤収を進めることになっているが、タリバンがこれを順守しているかは疑問が多い。
 それにもかかわらずトランプ氏は撤収に前のめりになっている。
 トランプ氏と同様にアフガン、イラクの二つの戦争の終結を公約したオバマ前大統領は、一一年にイラクからの完全撤収をいったんは果たした。
 ところが、これがISの台頭を許すことになったと厳しく批判された。トランプ氏の姿勢は同じ轍(てつ)を踏む危険をはらむ。
 タリバンは和平合意を履行した、と米国が判断すれば、来春には完全撤収の運びだ。米国は状況をよく見極めて慎重に進める必要がある。

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