株価好調でも…与党、金融所得への増税見送り 格差是正は置き去り

2020年11月28日 06時00分
 
 2021年度の税制見直しで、自民党の税制調査会は、個人が持つ株の売却益や配当金といった「金融所得」に課す税率の引き上げを見送る方針を示した。金融所得が多い富裕層の負担増を避けた形だが、株取引などの収入を含めた実質的な所得税の負担割合は高所得者ほど低い。株価が連日のように高値を更新する中、株を持たない国民との格差拡大が懸念される。(大島宏一郎)
 所得税は、収入が高い人ほど税率が上がる「累進課税」。最高税率は55%(住民税含む)だが、金融所得については、給与など他の所得と切り離すうえ、一律20%(同)の税率が単独で課される。例えば、年間の収入が1億円の人で、全てが給与なら税率は55%だが、全てが株の売却益なら20%となる。株の売買で多額の利益を出す方が所得税の負担が少なくなる。
 国税庁の調査では、所得に対する納税額の割合(国税のみ)が、所得5000万円超~1億円以下の人で28%なのに対し、50億円超~100億円以下の人では19%にとどまる。国税庁出身で東京財団政策研究所の岡直樹氏は「富裕層は税率の低い金融所得を多く得ているからだ」と分析する。
 金融所得への課税を巡っては、与党が19年度の税制改正大綱で「税負担の公平性を確保」と明記し、将来の税率の引き上げに含みを残していた。しかし昨秋の税調では、投資控えによる株価への悪影響を懸念した自民党税調の甘利明会長が早々と見送り。今回も、26日の会合後の取材に「今の時点で(税率を)改めることにはならない」と述べた。
 少数の富裕層が優遇されている現状には、与党内でも「なおざりにできない」(税調幹部)と、問題視する声がある。足元では日経平均株価が右肩上がりで上昇しており、慶応大の土居丈朗教授は「株の売却で利益を得た人は一定数いる」と推測。その上で「このままでは格差がさらに広がりかねない。欧州諸国並みの税率(25%)を検討する必要がある」と指摘する。

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