アマビエ様おせち、マスク福袋、お歳暮販売は密避けてスマホ整理券… 新しい年越しで変わる商戦
2020年11月30日 08時06分
明日から師走。お歳暮や迎春準備で百貨店が混雑する時季だ。コロナ禍の今年はITを使ったり、売り出し期間を分散したりと感染対策に工夫をこらす。感染拡大が収まらない中、いつもとは違う年末商戦をのぞいてみた。
「コロナは気になるけど、やっぱり自分の目で見て選びたい」。今月下旬、友人と西武池袋本店(豊島区)を訪れた川崎市麻生区の主婦(57)は話す。毎年、お歳暮選びでは百貨店に足を運んでいる。「今年は試食がない。コロナ対策かしら」と違いを指摘する。
同店の担当者によれば、感染対策の一環で今年のお中元から試食を廃止。ただ、お歳暮では、贈答用のハムを百円で試食できるコーナーを設けた。「味を確かめたいというお客さまもいるので。反響を見て、今後に生かしたい」
ほかにも通路を広げたり、待合スペースを分散させたりと、こまごまとした対策を積み重ねる。受け付けの行列を短くしようと、スマートフォンのアプリを活用し、順番が来たら呼び出す「デジタル整理券」システムも今年のお中元から引き続き運用。待つ間にほかの買い物もでき、若い世代に好評という。
新年の食卓を飾るおせち料理の予約は好調だ。日本橋三越本店(中央区)では一人分ずつ盛り付けた、個食タイプのおせちが前年比四倍の売り上げ。「感染対策の一つで『取り分けない』ことも意識されているようだ」と担当者は話す。
帰省を自粛する代わりに遠方の実家に冷凍おせちを贈ったり、巣ごもり正月を盛り上げるため高価なおせちを選んだりと、前年比120%の売り上げという。
高島屋オンラインストアには、アマビエをデザインした和菓子やかまぼこ入りのオリジナル冷凍おせちが登場。わくわく感を増幅しようと、年末ジャンボ宝くじ十枚も付いている。「おせちは日本のお正月の必需品。たとえ海外に行けなくても、気分を上げられるように」と担当者は話す。店頭では販売していない。
変わり種は、JR東日本などが今年初めて売り出す「新幹線でお届けする『東北おせち』」。新幹線輸送に力を入れる同社が、仙台と盛岡、秋田の系列ホテルで作ったおせちを大みそかに都内に配送する。四種類でそれぞれ五〜十点限定。五万〜十万円と値は張るが「三陸産のイクラや、秋田のハタハタなど厳選した東北の食材を使った」と同社は自信を見せる。
初売りのお楽しみといえば福袋だが、店頭が混み合うのはこのご時世、避けたいところ。大手百貨店各社はインターネット予約や、販売期間を年末にも広げるなど対策をこらす。
松屋銀座(中央区)は密を避けるため、事前予約を大幅に拡充、十二月九〜二十日にインターネットで受け付ける。計約二万個用意する福袋の半数はネット予約と同二十六〜三十一日の店頭販売などでさばく。年始は一月二〜三日に、残る半数を販売する。
福袋の中身もコロナ禍を意識。浴衣生地やスワロフスキーのクリスタル付きなどおしゃれなマスクのセットや、旅行に行った気分になれる「北海道秋鮭の石狩鍋風」「名古屋味噌煮込み鍋風」など十道府県のご当地スープの詰め合わせなどを企画した。「年始の福袋販売は百貨店の大切な文化。感染状況によっては、販売方法をさらに工夫したい」と担当者は話す。
東武百貨店池袋本店(豊島区)もコロナ禍の生活を意識し、旬のフルーツなどが定期的に届く福袋十二種類を新設。いずれも応募抽選型で「国内産生本マグロ(養殖)一尾丸々」(三十万円、限定一点)や「半頭分ずつ食べつくし!国産黒毛和牛」(限定二点)など、豪快な商品が目を引く。「おうち時間の充実を支えたい」と担当者は話している。
文・梅野光春/写真・木口慎子、梅野光春
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