選管がプロ集団じゃない!?ニューヨーク州でまだアメリカ大統領選の開票が終わらない理由

2020年11月30日 17時00分

米東部ニューヨーク市で4日、「すべての票を数えろ」と訴える人々。郵便投票を除外しようとしたトランプ大統領への抗議だったが、ニューヨーク州では開票作業自体が遅れた=Leah Sorkinさん撮影

 米大統領選挙の投開票から1カ月近くがたった。バイデン前副大統領が勝利したが、今も東部ニューヨーク州では、開票作業が続いている。激戦で集計をやり直したわけでも、トランプ大統領が訴える不正があったわけでもない。経済、文化、流行…。何事も全米の最先端を行くはずの地で何が起きたのか。 (ニューヨーク・杉藤貴浩)

◆19世紀、究極の激戦州だった名残が…

 「84%」。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が29日伝えた、ニューヨーク州の推定開票率だ。大半の州が実質的に開票を終えた「98%以上」の中、9割にも届かないのは同州だけ。「もし(全体の勝敗を左右する)激戦州だったら世界の笑いものだ」。同紙は自嘲気味に語る地元州議会議員の声を報じた。
 リベラル色の強いニューヨーク市を抱える同州は、3日夜の開票開始早々に民主党バイデン氏の勝利が事実上決定。いまだ終わらない開票は大統領選の結果にこそ影響しないが、「そこにはかつて同州が究極の激戦州だった名残がある」と政治史に詳しいマウント・ホリヨーク大のダニエル・シトロム教授は言う。
 教授によると、19世紀後半、全米で当時最多の36人の選挙人を擁した同州では、民主、共和の2大政党が激しく対立。有権者への買収やどう喝、なりすまし投票といった不正が横行し、投票数が有権者数を上回る事態も発生した。
 結果、両党は互いを監視する意味から、州法に「選挙管理委員会の職員は、両党が任命する」という独特の内容を盛り込むことで妥協。以降、選管の職員ポストは両党有力者らによる無試験の縁故採用の道具にもなった。公益団体「NYPIRG(ナイプルグ)」のニール・ローゼンスタイン氏は「そのせいで、選管がプロ集団でない状態が現在まで続いている」と話す。

◆「郵便投票の開票は1週間後から」出足遅れ

24日、ニューヨーク市の開票所の一つが入るビル。今回の大統領選では新型コロナの影響で郵便投票の数が急増した=杉藤貴浩撮影

 そこに今年は新型コロナウイルスが襲った。感染予防のため、郵便投票などの不在者投票請求数は4年前の前回選の5倍となる250万票に急増。同州の郵便投票には、全てが届くのを待って投票日の1週間後から開票を始めるという非効率な規則もあるため、出足も大きく遅れた。
 州内の声を聞くと、「まだ開票しているの」との驚きの一方、「やはり」との反応も。ニューヨーク市で投票した大学生ナタリア・グリックさん(22)は「選管はかなりめちゃくちゃな組織だと聞いている」。夏の民主党予備選の郵便投票でも、投票用紙の郵送や届いた票の選別が遅れ、大量の無効票が発生し、開票に6週間を要したからだ。
 今回の開票状況を尋ねる本紙の数回の電話取材に対し、選管は「担当者が折り返す」と答えたきり無回答。ローゼンスタイン氏は、「ニューヨークは19世紀から21世紀に進まなければならない」と述べ、選管への正規公務員の任用などの改革を訴えている。

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