「中村哲さんのように役に立ちたい」 アフガンで、日本で…絵本で功績を語り継ぐ

2020年11月30日 18時00分

中村さんを題材にした絵本の読み聞かせに聴き入る子どもたち=アフガニスタンで(ザビーフ・マハディさん提供)

 アフガニスタンで人道支援に取り組む非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(事務局・福岡市)の現地代表だった医師中村てつさん=当時(73)=が、同国で武装集団に殺害されてから、12月4日で1年たつ。事件後、現地のNGOが中村さんを題材にした絵本を出版し、子どもたちに読み聞かせをしている。「自分も他の人の役に立ちたい」。功績を知った子どもたちから、内戦に疲弊した母国を立ち直らせようという前向きな言葉が聞こえた。 (山中正義)

中村さんを題材にした絵本(中)などを手にして喜ぶアフガニスタンの子どもたち=アフガニスタンで(ザビーフ・マハディさん提供)

 NGOは2016年設立の「ガフワラ」(アフガンの主要言語の1つダリー語で「ゆりかご」)。独自に作った絵本や外国語から翻訳した絵本を幼稚園や学校に贈る活動をしている。
 今年、ガフワラは2冊の本を出版した。1冊は中村さんがアフガンで、住民の命を守るにはきれいな水が必要と考え、用水路を建設し、乾いた大地を潤すという実話に基づく本。もう1冊は中村さんから「魔法の小箱」をもらった子どもが夢をかなえる物語だ。国際協力機構(JICA)の仲介で、大手通販会社「フェリシモ」(本社・神戸市)が出版資金を支援した。

中村さんを題材にした絵本を出版した「ガフワラ」のザビーフ・マハディさん=東京都内で

 ガフワラの代表ザビーフ・マハディさん(32)によると、絵本はアフガンの学校や図書館などに寄付。新型コロナウイルスの影響で学校などが閉鎖された期間もあったが、読み聞かせを20回ほど実施した。子どもたちは興味津々に聞き入り、「続きの話はないの?」と続編をせがんだという。
 本紙はマハディさんを通じ、現地の子どもに取材した。少女ニアエシュ・カティービさん(15)は、中村さんが地元住民と一緒に用水路を掘り、清潔な水を得た絵本の場面に触れ、「団結がとても大事。それが変化を可能にした」とかみしめる。「中村さんは日本から来て私たちのために懸命に働いてくれた。私もやらないと。私にだってできる」
 中村さんが凶弾に倒れた日、マハディさんはアフガンで悲報を知った。家に帰ると、母親が泣いていた。

中村哲さん=2009年2月

 同国は民族や宗派の違いから紛争が続くが、マハディさんは「中村さんはすべての人に受け入れられた。アフガンの歴史上でそんな人はいない」とたたえる。
 マハディさんは事件直後から、SNSで死を悼むビデオメッセージを発信。絵本を出版する事業に着手した。
 アフガンで出版した2冊は中村さんの命日の来月4日、日本で「カカ・ムラド~ナカムラのおじさん」(双葉社)としてまとめられ、発売される。カカ・ムラドはダリー語で「情熱おじさん」を意味する。売り上げの一部はガフワラとペシャワール会に寄付される。
 「アフガン社会に変化をもたらすのは中村さんのような存在」。マハディさんは絵本を通じ、他者に尽くす心が将来を担う世代に広がるよう願っている。

 中村哲さん襲撃事件 アフガニスタンで人道支援活動に長年取り組んできた中村哲さんが昨年12月4日、同国東部ジャララバードを車で移動中に武装集団に襲われ、殺害された。同乗していた現地人の運転手や護衛の計5人も死亡。事件の背景は不明で、容疑者は捕まっていない。同国では近年、反政府武装勢力「タリバン」や過激派組織「イスラム国」(IS)の地方組織の活動で治安が悪化している。

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