「中国人を襲え」SNSで拡散…アジア人の暴行事件や差別相次ぐ コロナ第2波のフランス

2020年11月30日 12時00分
 新型コロナウイルス感染者が欧州最多のフランス。第2波による都市封鎖(ロックダウン)が始まった先月末以降、アジア人への差別が目立っている。「ウイルスの感染源」との偏見から中国人への暴行の呼び掛けが会員制交流サイト(SNS)で拡散され、実際に暴行事件が発生。外見の区別が付きにくいため中国人以外のアジア系住民にも不安が広がっている。(パリ・谷悠己)

◆チャイナタウンの不安

 パリ市南東部の13区にある欧州最大規模のチャイナタウン。商店や集会所だけでなくキリスト教会にも中国語表記が目立つ。今月中旬に訪れると、ロックダウンのため人通りは少なかったものの、営業が許されている食材店などにアジア系住民が集まっていた。
 「すれ違う人にジロジロ見られたり口笛を吹かれたりすることが増えた」。総菜店従業員のベロニクさん(34)がため息をついた。フランス国籍だが中国とカンボジアにルーツを持ち、顔立ちは東洋人的。「コロナの前はこんなことはなかったのに」と憤る。
 食材店にいたベトナム人のアンさん(42)は「高校生の娘が学校でいじめに遭わないか不安がっている。若い世代はSNSの影響を受けやすいから…」と心配そうに話した。

◆「都市封鎖」発表後に

「ヒトラーはユダヤ人の代わりに中国人を殺害すればよかった」と書かれたツイッターの投稿。現在は削除されている=ソク・ラム氏提供

 仏メディアによると、マクロン大統領が今春に続くロックダウンを発表した先月28日夜、SNS上に「道で出会った全ての中国人を襲え」「13区で中国人狩りだ」などと書かれた投稿が拡散。翌日、公園で卓球をしていたアジア系男性が襲われ、別の男性は「感染の責任を取れ」と叫ぶ男に暴行されて全治20日のけがを負った。
 パリでアジア系住民の法律相談を受け付けているカンボジア出身のソク・ラム弁護士(49)によると、大統領発表直後のこうした暴行被害はパリ周辺だけでも10件超あったという。
 今春の第1波当時から差別的な言動は増えていたが、ラム氏は「第2波以降は身体への危害が加わり、明らかにフェーズが変わった」と指摘。SNS上の投稿を証拠に「不特定のアジア人を狙った脅迫が横行している」として地元警察に告発し、捜査が開始された。ラム氏は「当局は加害者を特定して厳格に処罰することで、被害の抑制に努めてほしい」と訴える。
 在フランス中国人青年協会が募った被害証言によると、差別の対象は中国人だけでなく韓国や東南アジアの出身者らアジア系住民全般に及んでいる。
 SNS上には「漫画をボイコットしよう」と日本人と中国人を混同したような投稿もあり、在仏日本大使館は邦人に一斉メールで注意喚起した。仏紙リベラシオンには、事態を重く見た100人超の国会議員が連名で差別抑制を求めた論評が寄稿された。

◆不安感から社会の分断加速

王思萌研究員(本人提供)

 移民史に詳しい仏国立科学研究センターの王思萌研究員によると、アジア人差別は19世紀末から世界中で存在するが、フランスでは他の欧米諸国に比べ顕著ではなかった。旧仏領インドシナ(ベトナム、ラオス、カンボジア)出身者を中心に古くからアジア系住民が移住して仏社会に溶け込んでいたためとみられる。
 王氏は「コロナ禍が人々にもたらした不安感が社会の分断を加速させ、アジア人も差別の対象に浮上した」と指摘。一方、控えめなためこれまでは差別を受けても沈黙しがちだったアジア人の間にも「私はウイルスではない」とのハッシュタグを付けSNSで被害を訴える動きが生まれ、連帯して差別に立ち向かおうとしているという。

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