コロナ 自分流の過ごし方 さだまさし/奥田瑛二

2020年5月10日 02時00分
 ゴールデンウイークが明けても新型コロナウイルス禍は続き、エンターテインメント界の人々も活動を自粛したまま。そんな日々、第一線で活動する人たちはどのような心持ちで過ごしているのか。2人に思いやメッセージを電話で寄せてもらった。

◆さだまさし 自由を守るための闘い

 三月十九日、名古屋市公会堂での公演が中止になって以来、コンサートは五月までなくなりました。さだまさしが止まると収入がなくなる関係者がいっぱい存在していて、僕の周りにも困っているミュージシャンが多くいます。
 人生で初めてですよ、何もするなって言われているのは。人とは会わないけれど、小説や依頼原稿を書いたり、読みたかった本を読んだり…。毎日忙しくしています。「緊急事態宣言の夜に」という曲も作りました。四月十日の誕生日に、YouTubeを通して歌いました。
 僕も手洗い、うがいはもちろん、常にアルコール消毒液を持ち歩いていて、自分の携帯電話も、いちいち消毒しています。これだけ気を付けていても、どこで罹患(りかん)するか分からない。だから決して罹患した人を差別しちゃいけない。
 日本という国は、緊急事態宣言を出しても、欧米や中国のような強制力がないですよね。これ、人権が守られているってこと、自由の証しだと思うんです。自粛で感染拡大を抑えられるんだという、日本人の秩序を世界に見せたいですよね。これは自由を守るための闘いなんです。その闘いに勝つためには、家でじっとしているしかない。
 知り合いの医師に聞いた話なんですけど、若い医師がコロナの医療現場に入る時に、遺書を書いたって。自分は死ぬかもしれないって追い詰められている。医療現場だけでなく、生活インフラに関わる仕事をしている方々に、僕たちは感謝しなきゃいけない。彼らは命をかけて闘っている。
 彼らの負担を少なくするには罹患しないこと。みんなが、自分は無症状の感染者だと思って行動すればいいんじゃないかと思います。そうすれば、人と会うことを避けるし、絶対マスクはするし、手洗いするでしょ。感染者を差別もしない。みんながもっと臆病になって恐怖心を持つことです。
 夏までにこの闘いが終わるのか…。人と会えなくたって、決して孤独じゃない。つらいのは君だけじゃない。一致団結して、家にこもりましょう。
  (聞き手・山崎美穂)
<さだ・まさし> 1952年、長崎市生まれ。73年、フォークデュオ「グレープ」としてデビュー。76年、ソロ活動を開始。2020年4月現在、コンサート数の累計は4400回を超える。小田和正との共演曲「たとえば」など13曲を収録した新アルバム「存在理由」を20日にリリース。新著にエッセー集「さだの辞書」(岩波書店)。

◆奥田瑛二 止まった時間むしろ新鮮

(c)Daisuke Miura(gorelax E more)

 映画、テレビドラマの撮影や各種イベント、そのほとんどがキャンセルになりました。僕が監督する新作映画も、夏前にクランクイン予定なのですが…。俳優、映画監督、映画会社社長と、農家に例えると生産から出荷まで請け負う立場なので、影響は大きいがどうしようもない。なるようにしかならないであろうと思います。
 自分自身やそれぞれの環境を、見つめ直す時なのかな。家族とも「原点回帰。本来、人としてあるべきことを考える時だね」と話しています。物作りに携わる人間としては、止まった時間というのは貴重です。止まっている時に動いても溺れていくだけ。ちょっと前に至った境地は、あれこれ考えるのはやめようと。人は考えない間にも考えている。静寂がとてもいいことなのだと切り替えました。
 人から伝わる言葉というのが、どこか装飾されたものに思えて、テレビはほとんど見なくなり、すごく気が楽になりました。雑音が入ると、培ってきた自分の倫理観が揺らぐ。この状況下ではマイナスです。空が見えるほこらの中で、風を感じ、雨を見つめ、黙々と一日を過ごすことは、怠け者じゃないと感じます。人が「生きる」ことは、「過ごす」ことなんだなと。「暮らす」のはストレスを抱え、日々に追われるけど、何も考えずに過ごす一日はあっという間。時間が動いたら、この月日はとても新鮮に感じるんじゃないかな。
 外に出ず、家にいる生活で、たまにある“句読点”を楽しむしかない。それは何か。掃除魔になりました。朝から隅っこのちりやほこりをぞうきん五枚くらい駆使して、しゃがんではいつくばって、天井のはりまで拭く。妻に「ほら見ろ」とは言わず、とにかく黙ってね。一カ所を終えて、次の場所に移る前につくひと息。気持ちがいいものだなあと。ジムに行かなくても、インナーマッスルが鍛えられます。
  (聞き手・古谷祥子)
<おくだ・えいじ> 1950年、愛知県春日井市出まれ。79年、「もっとしなやかにもっとしたたかに」で映画初主演。最近の出演作に「洗骨」「Diner ダイナー」など。2001年に「少女~an adolescent」を初監督。06年の「長い散歩」は、カナダ・モントリオール世界映画祭でグランプリなど3冠に輝いた。

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