エンタメ 今こそ意義 堀義貴・ホリプロ社長にコロナ危機を聞く

2020年5月2日 02時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大は、エンターテインメント界にもかつてない危機をもたらしている。好調だったライブが中止に追い込まれ、テレビ番組の制作は中断、新作映画も公開できない状況が続く。しかし、大手芸能事務所「ホリプロ」の堀義貴社長は電話インタビューに、業界団体のリーダーでもある立場から、厳しい環境にある今こそ「エンタメの意義」を強調する。 (原田晋也)
 「カタストロフだ」。堀社長は、エンタメ界が置かれた苦境をこう表現した。演劇など物語の世界で「悲劇的な結末、破局」を意味する用語は、通常「大災害、大変動」と訳す。
 政府が大規模なイベントなどの中止や延期を呼び掛けたのは二月二十六日。当初は「今後二週間」と期限付きだったが、日に日に事態は深刻となり、延び続けている。この間、タレントやスタッフは再開を期して準備を続けざるを得ず、一カ月稽古したが開演できなかった舞台もあったという。「経済的にももちろん痛いが、積み上げてきたものが全く無になる喪失感は半端ではない」と苦しい胸の内を明かす。

■作り手に支えを

 今、最も心配しているのが、エンタメの作り手が倒れていくこと。裾野が広い業界で「見えないところで支えている人の方が圧倒的に多い」。例えば、スタッフ用の弁当業者や音響機材業者などだ。「末端の人からどんどん苦しくなっている。五月に入り、“決断”する会社もあると思う」との認識を示した。
 ぴあ総研の調べでは、ライブイベントの中止や延期が五月末まで続けば、約三千三百億円の損失が見込まれるという。こうした状況に政府は、購入者がチケットの払い戻しを求めなかった場合、寄付とみなして税負担を軽減する措置や、終息後にイベントチケットの補助クーポンを出す案などを打ち出している。しかし、「両方とも事業者には何の得もない。政府には今、業者が倒れないようにしないとV字回復なんてありえないことを理解してほしい」と訴えた。
 公的支援では海外との差を感じているという。「ドイツや米国では、外国人アーティストでも早い段階でまとまった金額が国から入金されたと聞いている。エンタメが国の財産だと思っているから手厚いのだろう」。一方で日本については「『クールジャパン』というが、これでは『冷たい日本』だ。海外で稼いでくれと言うのに、死にかかっている時は手を差し伸べない」と批判する。
 「エンタメは日本経済にさしたる影響力がないと思っているのではないか。政策を作る側の人は舞台を見に来ないし、テレビドラマもアニメも何十年も見ていないのでは。どれくらいすごいのか分かっていない」

休業が続く映画館の入った建物=東京都内で

■「不要」ではない

 コロナ禍で経済が停滞する中、エンタメは「不要不急」で「生きるために必要ではない」と分類されがちだ。こうした風潮には「米国の作家スティーブン・キングもツイッターで『もしアーティストが不要だと思うなら、隔離中(自宅にいる間)、音楽、本、詩、映画、絵画なしで過ごしなさい』というメッセージを出した。ただ食べて寝るだけで、本当に幸せだろうか」と疑問を投げ掛ける。
 「芸人のインタビューでの一言で人生が変わったという人もいるし、死のうと思っていた人も歌を聴いて百八十度人生が変わることがある。『あったらいいな』と思うことに感情移入することが、どれほど自分の人生を豊かにしていることか」と、エンタメが果たす役割を強調する。
 「人は泣きたい時は泣き、笑いたい時は笑った方がいい。社会にいるうちに抑圧されるが、そこを埋めているのがエンタメだ。言葉や音楽の力を過小評価すると、必ず精神のバランスが崩れますよ」

作家スティーブン・キングが公開したメッセージ=ツイッターから

<ほり・よしたか> 1966年東京生まれ。89年ニッポン放送入社、93年ホリプロ入社。2002年から代表取締役社長、13年からは芸能事務所で構成する日本音楽事業者協会の会長を務める。
<ホリプロ> 1960年創業。タレントの発掘、育成、マネジメントだけでなく、テレビドラマや映画の企画制作、演劇やミュージカルの公演など幅広い事業を展開している。和田アキ子や綾瀬はるか、石原さとみ、藤原竜也、鈴木亮平ら多数の著名タレントが在籍する。

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