コロナ禍に視覚障害者も困惑 開けっ放しのドア、開閉音なく分からない…「ほんの数分助けて」

2020年12月1日 06時00分
 新型コロナウイルス禍で、駅ビルや飲食店の入り口などで立ちすくむ視覚障害者が増えている。普段はドアの開閉音を頼りに位置を認識し、出入りするが、換気で開けっ放しにされているため音が鳴らないのだ。東京都内では代替策として誘導ブロックを敷いた郵便局もあるものの、まだ1カ所。視覚障害者団体は「コロナ禍で接触がためらわれるだろうが、数分でいいので手助けを」と呼び掛けている。(中村真暁)

ドアの開閉音の代わりに郵便局前に設置された誘導ブロックを頼りに歩く武井悦子さん=いずれも東京都豊島区で

◆誘導ブロック設置に喜ぶ

 「たかが2メートルでも、私たちには大事な情報源」。11月上旬、豊島南大塚郵便局(豊島区)の前に誘導ブロックが敷かれ、近くに住む全盲の武井悦子さん(65)は声を弾ませた。
 ドアには以前から防犯のため、開閉すると音が鳴るように鈴が付いている。コロナ対策で夏ごろからドアを開放したままにすると、目の不自由な人がドアの位置を認識できず、前を通り過ぎることが頻発した。福富裕人ひろと局長(44)は「鈴の音を頼りにしていたと知り、驚いた」と振り返る。

豊島南大塚郵便局入り口の上部に付けられた鈴

 武井さんも鈴の音が聞こえずに通り過ぎ、通行人に「郵便局はどこですか」と話し掛けて案内してもらった。同局をよく訪れる視覚障害者は他にも3、4人いて、顔なじみの人が通り過ぎるのを社員が見つけて呼びに行くこともあった。
 利用者から対策を求められた同局は、ドアの前に誘導ブロック付きのマットを設置。局が面する都道の歩道上のブロックとつなげるため、都に掛け合って分岐してもらった。

◆店を間違えて

 武井さんは飲食店でも同様に困った経験がある。以前は開閉音や触った感触を頼りにドアを探したが、開放されていて分からず、隣の店に入ってしまった。「自動か、手動か、大きさはどれほどかで特定していたが、あちこち開いていて分からない。どんなふうに開いているかも分からないまま進み、壁にぶつかったことも」と打ち明ける。
 別の視覚障害の男性(53)は、カレーを食べたかったのにドアの開閉音が聞こえず間違えてラーメン店に入ってしまい、申し訳ないからとそのままラーメンを食べたという。「近くまで行けても最後の1、2メートルが分からない」と訴える。
 日本視覚障害者団体連合の佐々木宗雅組織部長は「視覚障害者は記憶を頼りに行動する。聞こえる音や風向きが変われば戸惑う。コロナ禍の生活様式の変化で困り事は増えている」と指摘する。

◆白杖のシール見たら助けて

白杖の持ち手に貼って短時間の手助けを呼び掛けるシール

 問題を解消しようと、武井さんが会長を務める豊島区盲人福祉協会は「2、3分サポートしてください」と書いたシール300枚を、区民社会福祉協議会の助成などで作成。白杖に貼ってもらい、困ったときに高く掲げて助けを求めるポーズ「白杖はくじょうSOSシグナル」をするときに、周囲から気付かれやすくするという。
 コロナ禍で人と人との接触が避けられるようになった。武井さんは「声を掛けてくれる人が減った。嫌がられたくないと助けを求めるのをためらう視覚障害者もいる。3分くらいの相談なら、と思ってもらえれば」と話している。

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