児童虐待の増加 孤立防ぐ手だて続けよ

2020年12月1日 06時42分
 児童虐待の件数が増え続けている。子どもたちをどう守るかは子育て中の家庭だけでなく、社会全体に問われている。地域のあらゆる資源を投入して親子を孤立させない取り組みが欠かせない。
 十九万三千七百八十件。全国の児童相談所が二〇一九年度に児童虐待として対応した件数だ。
 前年度比21・2%の増、一九九〇年度の統計開始以来二十九年連続で最多を更新した。
 警察の通告による対応が年々増え、全体の半数を占める。十年前の約十五倍に増えた。虐待への社会の関心が高まったことが背景にあるのだろう。
 虐待の種類にも変化が見られる。十年ほど前は身体的な虐待、ネグレクト(育児放棄)が多かったが、最近は心理的虐待が半数を超えている。
 子どもの前で家族に暴力を振るい恐怖心を与える「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」が目立ちだした。
 父親が加害者になる割合も上昇している。一昨年に東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)、昨年は千葉県野田市で栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=の死亡事件でも父親から母親への暴力があったことが公判で明らかになっている。
 支援は母親だけでなく父親が抱える問題へのケアも課題だろう。
 コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、親が抱えたストレスのはけ口が立場の弱い子どもに向かいやすい環境だ。しかも、外出機会が減ったことで地域からは見えにくくなっている。実際、今年一月以降の対応件数は増加傾向だ。
 養育に困難を抱える家庭が地域から孤立しSOSを発せられない状況が虐待の背景にある場合が多い。地域の見守りを広げたい。
 厚生労働省は児童相談所で活動する児童福祉司を五年で二千人増員し二〇二二年度に五千二百六十人の人員確保を目指している。
 現場からは育成が追いつかないとの懸念がでている。人員確保は必要だが、虐待事案に的確に対応できなければ支援につながらない。自治体は人材育成にも知恵を絞ってほしい。
 専門職の手を借りる取り組みも始まっている。虐待を見つける医師や、子育て相談ができる保健師、法的な助言が期待される弁護士などだ。こうした他職種との連携を深める必要がある。
 市民からの通報が増え、警察の役割も増した。虐待を疑われる子どもの保護に自治体との連携強化が不可欠だ。さらに進めたい。

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