<財徳健治のマンスリーフロンターレ>J史上最速優勝 強さの秘密は「考える足」
2020年12月1日 07時10分
強い強いフロンターレでした。G大阪を5−0で蹴散らして史上最速優勝を決めた時点で、最多勝ち点、最多勝利数、最高勝率をマークした戴冠です。
いろいろある勝因の中で「選手層の厚さ」が挙げられています。「交代で誰が出てきてもチーム力は落ちるどころか一段とアップする」。対戦したチームの多くの監督が口にしました。
新型コロナウイルスの影響による過密日程に伴い、通常は3人の交代枠が5人になり、フロンターレはリーグ再開後の29試合中27試合で5人枠を活用しました。交代で勢いを増した後半に79得点のうち50得点を挙げ、うち24得点が交代出場の選手でした。
確かに、層は厚い。でも層の厚さとは? ここで欠かせないのは全員で「同じ絵」を描けているかどうかです。
あらゆる状況に対処するには、局面を観察する力が必要です。観察の後は瞬時に次のプレーを判断する力が要ります。そして、間違いをすぐに修正する力も。それらをみんなで共有できているかどうかが層の厚さをつくるのです。
FW小林悠は「練習ではみんながライバルで競い合い、試合では一丸になる」と話しました。厳しい練習で細部まで突き詰めて戦術を染みわたらせます。
止める。蹴る。走る。いつ、どこへ、どのように。ボールを扱うのは足でも、頭はいつも一つ一つのプレーの「なぜ」を考えています。かれらの足は「考える足」なのです。
リーグ戦はあと4試合。残る記録にシーズン最多得点84があります。2006年の自分たちの数字。「自分たちの記録は自分たちで」と塗り替えるでしょう。
それにつけても…。チームのレジェンド、MF中村憲剛の試合を最大であと6試合(リーグ戦4、天皇杯準決勝、決勝)しか見られないのは本当に寂しい。
彼がボールに触れるだけで、サッカーは豊かになった。どんなプレーでもいとも簡単にやり、理にかなっている。サッカーはこんなに楽しいものなのかといつも感じ入ったものでした。
耳にした言葉や目にした態度は、サッカー愛にあふれていたように思います。元日本代表監督のイビチャ・オシム氏は言います。「サッカーを愛し、本当に優れたプレーヤーはサッカーから離れるべきではない。若者たちのために監督としてサッカーに関わり続けてほしい」
いつか、そんな日が来ることを信じて…。
(スポーツライター)
(スポーツライター)
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