和楽器バンド「たる募金」第2弾 「福山琴」救え 感染対策を徹底しライブ継続

2020年12月1日 07時13分

和楽器バンドのライブ=10月24日、東京都江東区で(田辺佳子撮影)

 コロナ禍で苦境に立たされた老舗三味線メーカーを支援した8人組のロックバンド「和楽器バンド」が、今度は江戸初期発祥とされる「福山琴」に手を差し伸べる。琴の最大シェアを誇る広島県福山市には逸品も多く、そのブランド力も知られるが、近年の災害にコロナも重なり、ピンチが続く。感染防止策を徹底して、いち早く大規模ライブを再開した人気バンドのその行動力が、日本の琴(箏)文化を守る。 (山岸利行)
 和楽器バンドは今夏、廃業を決めていた三味線の大手老舗メーカー、東京和楽器(東京都八王子市)のため一肌脱いだ。支援プロジェクト「たる募金」を実施、ライブ会場などで集まった善意のお金など約800万円を寄贈した。同社の廃業は当面回避された。
 廃業を報じた本紙記事を読んだバンドメンバーで箏担当、いぶくろ聖志(きよし)(36)は「(記事で)危機感を覚えた。この現状の情報を共有したかった」とSNSで発信、「たる募金」につながった。

和楽器バンドのいぶくろ聖志=東京都内で

 プロジェクトの第2弾は、和楽器バンドが広島県福山市と共同で「福山琴」を支援する。2年前の水害で琴産業は大きな被害を受け、今年のコロナ禍も追い打ちをかけた。10月のライブから募金をスタート。来年1月3、4日の東京・日本武道館での公演まで、会場やオンラインなどで協力を募っている。寄せられた支援金で琴工房に琴を発注し、地元の学校に寄贈する計画だ。
 琴の魅力を、いぶくろはその「音」にあるという。「色鮮やかなものから水墨画の深みまで」、多彩な音色を出せるのが特長。「初めての人ほど取っ付きやすく、たとえば『さくら』なら、1時間ほどでできるようになる」という。「伝統楽器」というと上品でハードルが高いなどのイメージがついて回るが、「未来に残していくためにはまず楽しむことが大切」と話す。
 コロナ禍により、集客が伸び続けていた音楽ライブも一変した。公演の中止や延期が相次いだ中、和楽器バンドは8月に横浜アリーナ(横浜市港北区)で、観客5000人規模のライブの先陣を切った。すべてのスタッフ、観客に検温、消毒を徹底し、電子チケット対応を施すなど、今ではスタンダードになっている対策を早くから講じた。

和楽器バンドのライブ=10月24日、東京都江東区で(撮影・田辺佳子)

 また、ライブの所要時間も従来の3時間ほどから2時間程度に短縮したり、楽曲の合間のトーク時には換気に留意、観客に発声しないよう協力を求めたりしている。協力を求めるだけでなく、普段なら撮影禁止のライブで、1曲だけ撮影OKの時間を設けるなど、ファンサービスに工夫も凝らしている。
 アーティスト側もウィズコロナを強く意識。いぶくろは「会議はリモート、リハーサルは短め、(終演後の)打ち上げはなし」と話す。小まめな手洗い、うがいはもちろん、むやみに物に触らないことも徹底しているという。そうした中でのバンド活動に、「(コロナで)落ち込んでいる人が前に進むきっかけになるのがエンターテインメントでは」と強調する。
 不要不急といわれることもあるエンタメだが、「無駄なものが人生を豊かにしてくれる。『たる募金』でより広い社会にアプローチし、いろいろなことに挑戦できるアーティストでありたい」と今後の抱負を語った。

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