<王室ファッション裏話>(1)ヘンリー8世 富と権力と男性性 誇示

2020年12月1日 13時46分

「ヘンリー8世」 作者不詳(ハンス・ホルバイン[子]の原作に基づく) 17世紀か(原作:1536年)油彩/銅板 ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー蔵 (C)National Portrait Gallery, London

 東京・上野の森美術館で開催中の「KING&QUEEN展」では、英国王室の華やかな肖像画を紹介している。モデルとなった国王や女王は、いずれも特徴的な姿で描かれているが、身にまとった衣装や宝石にはどのような意味があるのだろうか? 5人の国王のファッションについて、服飾史家の中野香織さんに解説を寄せてもらった。
     ◇
 白いリネンのシャツは財産目録にも記された贅沢(ぜいたく)品。上に重ねたダブレット(胴着)に連続的な切り目を入れ、シャツをつまみ出している。切り目装飾は胴着にストレッチ効果を与えると同時に、この財産を誇示する役目も果たす。手首にのぞくシャツは、手元が汚れる労働をしない地位にある人のステータス表示である。この幻影が、現代のスーツの着こなしルールとして残る。
 胴着には詰め物をし、巨体をさらに大きく見せる。切り目装飾の留め金には、戦勝と権力を保証するルビーをあしらう。指輪とペンダントは、黒く見えるが富をもたらすダイヤモンド。
 教養、体格、武芸に秀でたヘンリー八世が、富と権力と男性性を誇示する雄クジャク的装いで酷薄な視線を投げる。実物の肖像画が私の携帯用PCと同サイズというかわいらしさで、思わず微笑(ほほえ)みを誘われる。 (服飾史家・中野香織)

◆当日券あり 予約不要

 本展は来年1月11日まで休館なしで開催中。事前予約せずに購入できる当日券を会場で販売中。問い合わせはハローダイヤル=電03(5777)8600=へ。

おすすめ情報

ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展の新着

記事一覧