写真よりリアルに一瞬描く 上田薫さん作品一堂に 県立近代美術館
2020年12月2日 07時34分
写真よりもリアルに物質の一瞬を切り取る作風で知られる画家・上田薫さん(91)の作品展が県立近代美術館(さいたま市)で開催されている。同館の所蔵品人気投票で一位になった「ジェリーにスプーンC」(一九九〇年)など八十四点が集合。ほぼ年代ごとに並んだ作品からは、作風の変化なども読み取れる。来年一月十一日まで。 (前田朋子)
東京芸大で梅原龍三郎らに師事した上田さんは、五六年に映画のポスターで国際的な賞を受賞。その後グラフィックデザインの世界で活躍した。七〇年ごろには再び絵の世界に戻り、貝殻や靴など静物を目に見える以上にリアルに描き込んだ作品を生み出した。
溶ける様子を描く「アイスクリーム」や割れて殻から垂れ下がる「なま玉子」シリーズなどで、物質が生む現象を切り取る作風を確立。スプーンや白身に映る自らの姿まで描き込む繊細な仕事で、従来のリアリズム絵画とは違う独自の地位を築いた。
今回の展覧会では作家のインタビュー画像とともに、現在の描画法も紹介。撮影した写真からキャンバスにトレースし、繊細に彩色する様子が観察できる。同館学芸員の喜多春月さんは「(日常的には)見ることのない時間の幅や、絵になりにくい光や空、ちりなどをどう作品にしているか、ぜひ見てほしい」と話す。
午前十時〜午後五時半。月曜と二十八〜一月五日は休館(一月十一日は開館)。一般千百円、大高生八百八十円。十二月六、十三、十九日は学芸員によるスライドトークなどがある。
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