コロナと北朝鮮 極端な封鎖は悲劇招く

2020年12月2日 07時47分
 北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境を封鎖し、違反者を厳しく処罰するなど極端な対策を始めた。患者の発生はないとしているが、食料や精神面で住民に重大な悪影響を与えかねない。
 北朝鮮は、コロナ対策にいち早く取り組んできた。海外からの入国者を三十日間隔離する措置を取ったほか、国営メディアが予防策を周知し、住民の健康チェックやマスク着用も進めた。
 ところが、世界的な流行が再燃した最近、常識外れな防疫措置を始めたことが分かった。
 韓国の情報機関、国家情報院の国会報告によれば、北朝鮮は先月中朝国境の恵山(ヘサン)、同国最大の貿易港がある南浦(ナムポ)を封鎖。さらに首都平壌(ピョンヤン)への出入りも遮断した。
 恵山などの封鎖は国外からの物資搬入発覚が理由で、責任を問い、税関幹部が処刑された。中国の支援米十一万トンも、ウイルスの付着を恐れて受け取らず、中国の港に放置されている。
 北朝鮮は貿易の九割を中国に依存している。ところが中国税関総署によると、九月の中国と北朝鮮の貿易総額は前年同月比91%減となっており、事実上貿易はストップ状態にある。
 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は党の会議で国境封鎖をさらに強化するよう指示した。海水を通じたコロナ流入を恐れ、沿岸での漁業や塩の生産までも禁じたという。
 国境地帯の住民は移動が厳しく禁止され、韓国との軍事境界線には新たに障壁が建設されている。韓国国情院は、これら一連の「非合理的な措置」は、正恩氏の指示によるものだと指摘している。
 北朝鮮は医療体制が貧弱で、感染が広がれば多数の犠牲者が出るという恐怖心があるのだろう。しかしこれでは、住民の人権を無視しているとしか言えない。
 世界保健機関(WHO)の最新の報告書によると、北朝鮮は十月末時点で感染者は出ていないとしている。感染が疑われる人は急増しており、危険な状態が続いているのは容易に想像できる。
 北朝鮮内では治安が悪化し、物価が高騰。不正腐敗も増えていると報道されている。
 このままでは餓死者や暴動の発生などといった悲劇的な事態も招きかねない。
 韓国統一省は、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬が開発された際、北朝鮮へ提供を申し出ている。北朝鮮は国際社会の支援を受けながら、バランスの取れた防疫体制を築くべきだ。

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