「もし『リーマン・シスターズ』だったら金融危機は…」 多様性で危機脱却に挑むバイデン氏の経済対策チーム

2020年12月2日 20時37分

バイデン次期米政権で女性初の財務長官に指名が決まったジャネット・イエレン氏=AP

 バイデン次期米大統領から1日、女性初の財務長官に指名されたジャネット・イエレン前連邦準備制度理事会(FRB)議長(74)は、これまで連邦政府やFRBで働く女性、マイノリティー(人種的少数者)の研究者の積極登用を呼び掛けてきた。(ワシントン・岩田仲弘)

◆イエレン氏「女性は男性よりもリスクを回避し、自信過剰にも陥らない」

 「友人のクリスティーヌ・ラガルド(現欧州中央銀行総裁)が『リーマン・ブラザーズ』ではなく『リーマン・シスターズ』だったら、金融危機は起きなかった、とよく冗談半分で話すが、まさに至言だと思う」

欧州中央銀行のラガルド総裁=ロイター・共同

 昨年9月、首都ワシントンのシンクタンク・ブルッキングズ研究所が主催した「官庁エコノミストのジェンダーと人種的多様性」と題したシンポジウム。同研究所の特別研究員を務めていたイエレン氏が基調講演でこう語ると、会場がどっと沸いた。
 2008年9月、米国の住宅バブル崩壊をきっかけに証券大手リーマン・ブラザースが経営破綻し、世界は未曽有の金融危機に発展。イエレン氏はその後、FRBの副議長や議長として、ラガルド氏は国際通貨基金(IMF)専務理事として危機回復に努めた。
 イエレン氏は講演で「女性の方が男性よりもリスクを回避し、自信過剰にも陥らない、と多くの研究が示している」とも述べた。ただイエレン、ラガルド両氏とも「すべて女性が男性に取って代わるべきだ」と主張しているわけではない。あくまでも「白人男性」に偏った組織を見直す必要性を訴えている。

◆ラガルド氏「組織は多様性に富むほど危険な意思決定を減らせる」

 実際、ラガルド氏はリーマン・ショックから10年の節目の18年にもIMFのブログで「リーマン・シスターズ」に言及した上で「組織が多様性に富むほど、思考が研ぎ澄まされ、不合理、危険な意思決定を減らし、危機を招く無謀な意思決定を回避できる」と指摘している。
 イエレン氏も講演で「18年時点で博士号を持った女性の官庁エコノミストは全体の30%、黒人などマイノリティーは24%にとどまる」というブルッキングズの調査結果をもとに「多様性を過小評価することは不公平であるだけでなく、政策が偏る」と強調。
 多様な集団は「複雑な問題を解決する行動に優れ、より熟議を重ね、なれ合いを断ち切ることができる」として、連邦政府による多様な人材登用を「最優先課題」と訴えた。

◆バイデン氏、重要ポストに女性や黒人を起用

 訴えが届いたのか、バイデン氏は、リーマン・ショック以来といわれる新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済危機の克服に向け、経済チームの司令塔となる財務長官にイエレン氏を指名した。

1日、米東部デラウエア州で会見するニーラ・タンデン氏=AP

 予算編成を担当する行政管理予算局(OMB)局長にインド系のニーラ・タンデン氏(50)、経済政策を助言する大統領経済諮問委員会(CEA)委員長にはアフリカ系のセシリア・ラウズ氏(56)と、それぞれ女性を起用。財務副長官にも黒人男性のウォーリー・アディエモ氏を指名した。

1日、米東部デラウエア州で会見するセシリア・ラウズ氏=AP

 イエレン氏とともに官庁や学界の女性・マイノリティーの積極登用を訴え、先のシンポジウムにもパネルとして参加したスワスモア大のアマンダ・ベイヤー教授(経済学)は「イエレン氏の指揮下で、財務省はより多様性のある組織に発展するだろう」と期待する。
 ベイヤー氏はさらに「すべての人々がより恩恵を受けられるにはどうしたらよいか。経済政策も職場の環境改善も考え方は基本的に同じだ」と強調。「イエレン氏は役所の使命を果たすために最良のチームを構築するだろうし、その目標を組織や個人がどう妨げようとするのかも理解している」と指摘した。

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