聴覚や言語障害者 電話サポート24時間化 来年度、公的制度に

2020年12月3日 07時22分

モニター画面を見ながら「電話」を手話で表すオペレーター=滋賀県立聴覚障害者センターで

 病院の予約や荷物の配達依頼…。日常生活で電話を使う場面は多いが、聴覚や言語に障害がある人には難しい。そうした時、便利なのが手話通訳士らを介して電話ができる「電話リレーサービス」だ。日本財団(東京)が二〇一三年に開始したモデル事業は来年三月で終了。二一年度から公的な制度になる。二十四時間三百六十五日の対応が実現するなどサービス向上に期待が高まる。 (西村理紗)
 現在のサービスは、障害者がパソコンやスマートフォンを使って手話や文字で伝える内容を、オペレーターが電話をかけて相手に同時通訳する仕組みだ。情報の入手が命を左右する恐れさえあった一一年の東日本大震災で日本財団が被災者支援の一つとして実施。一三年九月からモデル事業をスタートさせた。
 今年十月に事業を引き継いだ同財団電話リレーサービスによると、登録者は年々増え、十月末現在で約一万二千三百人。月に三万回ほどの利用がある。オペレーターは手話通訳士の公的資格を持つ人や、全国統一要約筆記者認定試験に合格し、会話の内容を筆記通訳できる人ら。利用者の負担はオペレーターとの通信費だけだ。家族も全員聴覚障害者という都内の自営業女性(41)は「サービスが始まった時は、これで必要な時は自分で電話がかけられるとうれしかった」と振り返る。
 サービスを提供する施設は全国に十六カ所あり、利用者は専用サイトを通じ施設を選ぶ。滋賀県立聴覚障害者センター(草津市)はその一つ。五人のオペレーターがいて、多い日は一日約五十件に対応。荷物の再配達依頼や飲食店の予約といった何げない用件の電話が中心だという。
 ただ、公的サービスでないだけに課題は多い。二十四時間対応をしている施設はゼロ。110番などの緊急通報は原則として受け付けない。聞こえる人から聴覚障害者への電話も不可能だ。総務省によると、世界では、日本以外の先進七カ国(G7)をはじめ二十カ国以上で公共サービスとして整備されており、対応の遅れが指摘されていた。
 こうした中、制度化を後押ししたのが、一六年に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」だ。障害者への合理的配慮の提供や基礎的な環境整備が盛り込まれた。今年六月には、電話リレーを公的サービス化する法律が成立。本年度末のモデル事業終了後、来年度からは国が事業所を選定して実施することになった。二十四時間三百六十五日の利用が可能で、緊急通報にも対応できるようにする。
 一四年から公的サービス化を求める署名活動に取り組んできた横浜市のNPO法人「インフォメーションギャップバスター」理事長で、聴覚障害のある伊藤芳浩さん(50)は「まずは土台ができた」と喜ぶ。一方で「電話を受ける側の理解も不可欠」とくぎを刺す。同法人が四月、百二十六人のサービス利用者に調査したところ、44%が電話を受けた企業などから「(オペレーターでなく)本人でないと駄目」と断られた経験があると回答。クレジット会社や金融機関が多いという。「通話を切られた」と答えた人も19%いた。
 厚生労働省自立支援振興室によると、国内の聴覚障害者は一六年時点で約三十四万人。伊藤さんは「これまで電話を使ったことがない聴覚障害者は多い」と指摘。その上で「使ってみれば電話は便利。将来のある耳が聞こえない子どもたちには、電話を当たり前に使って社会で活躍してほしい」と期待する。

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