高齢者の医療費 負担議論は避けられぬ

2020年12月3日 07時43分
 高齢者が医療機関の窓口で払う費用負担を引き上げる議論が大詰めだ。少子高齢化社会では広く費用を分担するしかない。負担能力のある人がどう負担するのか、先送りせず議論を進めるべきだ。
 七十五歳以上の一人あたりの年間医療費は男性が約百万円、女性が約八十七万円だ。現役世代の約十九万円に比べ高額である。
 誰もが年を取れば医療が必要になる。高齢者は年金生活者が多い。その配慮から七十五歳以上の窓口負担は現役の三割より低い原則一割にしている。
 これを二割に引き上げる制度改正が政府の全世代型社会保障検討会議で議論されている。その理由は現役世代の負担軽減にある。
 七十五歳以上の医療費は年間一六・六兆円だ。その一割を高齢者の保険料、五割を公費(税)、残りの四割を支援金として現役世代が保険料などから払っている。支援金は高齢者への「仕送り」で、その額は六・八兆円に上る。
 人口の多い団塊世代が七十五歳以上になり始める二〇二二年からは医療費が急増すると見込まれ、現役世代の負担も増える。
 さらに少子化で医療制度を支える現役世代は先細っている。その上、低賃金で雇用が不安定な非正規雇用が増えて保険料負担が重くのしかかっている。
 そこへコロナ禍である。失業や賃金低下が加わり生活を守ることすら厳しくなっている人が出ている。議論の先送りはさらに現役世代を苦しめることにならないか。
 現役の負担を減らさないと医療制度そのものの維持も困難になりかねない。費用を年齢ではなく負担能力に応じて引き受けてもらうことも必要だろう。
 具体的には、年金収入が年百五十五万円(対象者約六百五万人)から二百四十万円(同二百万人)までの間で対象者を区分した五案が検討されている。
 対象者を六百五万人に広げると現役世代の負担は千四百三十億円軽減されることになる。
 もちろん負担が増える高齢者にも配慮が要る。扶養してくれる家族の有無や保有資産によっても負担感は違う。必要な医療やその頻度も人によってさまざまだろう。利用頻度の高い外来受診の負担軽減策も同時に検討されている。高齢者の受診実態に合った制度改正にすべきだ。
 高齢者の医療を確保しつつ同時に応分の負担も求め、どう現役世代の負担を減らすか。こうした視点で制度の見直しを進めたい。

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