最終23巻発売「鬼滅の刃」に無限の感動 セリフが刺さり鼓舞されくじけず大人も涙

2020年12月4日 12時00分

店頭の特設レジで人気漫画「鬼滅の刃」の最終23巻を買い求める人たち=いずれも4日午前、横浜市中区の有隣堂伊勢佐木町本店で

 人気漫画「鬼滅の刃」(集英社、吾峠 呼世晴ごとうげこよはるさん作)の最終巻となる23巻が4日発売され、書店では開店から多くのファンが買い求めた。公開中のアニメ映画の記録的なヒットを受け、原作の人気も沸騰。なぜこれほどの支持を集めているのか。(清水祐樹、北爪三記)

 鬼滅の刃 大正時代の日本を舞台に、鬼に親弟妹を惨殺された炭売りの少年・竈門かまど炭治郎たんじろうが、鬼となりながらも生き残った妹・禰豆子ねずこを人間に戻す方法を探そうと、鬼の討伐組織「鬼殺隊」の一員となって戦う和風剣劇。原作は吾峠呼世晴。2016~20年、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載。19年4月にアニメ放送が始まると、コミックの売り上げも急伸し、累計発行部数は1億2000万部を突破している。

◆漫画も小説も出版界席巻

 23巻は雑誌掲載時にカットされた箇所が追加されたほか、巻末に描き下ろしの特別漫画や作者のあとがき文章を収録。オリコンが先月末に発表した年間コミックランキングで「鬼滅の刃」1~22巻が上位22位を独占しているとあって、最終巻の初版発行部数はシリーズ最多の395万部。最多記録の尾田栄一郎さん作「ONE PIECE」(67巻、405万部)に肉薄する。
 コミックだけではない。10月に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は11月29日までに興行収入275億円を超えて国内興収歴代2位となり、1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)に迫る。ノベライズ作品も、オリコンの「文芸書」ランキングで1~3位を占めた。

発売日を迎え、平積みされる「鬼滅の刃」の最終23巻

◆鬼も魅力

 すさまじい人気の源泉は何なのか。元「週刊少年ジャンプ」編集長で、白泉社相談役の鳥嶋和彦さんは「1巻の『幸せが壊れる時には いつも 血の匂いがする』というナレーションにしびれた。数行のセリフに作品テーマが見事に提示されている」と語る。この後、主人公は惨殺された家族や鬼になった妹と対面し、妹を救うために立ち上がる。漫画で最も難しいのは、主人公のモチベーション設定というが、「彼がなぜ行動するのか。単純明快に読者に納得させている」。生きるために人間を食べないといけない鬼を敵としたことについても「敵の動機づけを設定する必要がなく、日本固有の鬼に着目したのも見事」と評価した。
 横浜国立大の須川亜紀子教授(ポピュラー文化論)は、鬼も含めて登場人物が暗い過去を持ち、悲しみなど心の動きが丁寧に描かれていると指摘し、「純粋に感動し、家族や仲間との絆の大切さが伝わる。言葉の力が強い」と分析。レトロ的なものが好まれている風潮に触れ「大正時代という設定も面白かった」。絵柄も「不気味さに共鳴する一方、不快感がないスタイリッシュな描線。単純な線のギャグとの案配も非常に巧み」と評する。

◆コロナ禍の中の光

 ファンからは「セリフが刺さる」との声が多く聞かれる。神奈川県内の主婦(49)は「『おのれを鼓舞しろ』『おれがくじけることは絶対にない』といった言葉に、励まされる」と力説。小学生の子どもから教わり、我慢を強いられるコロナ禍と重なった2~3月ごろにアニメで一気にはまったという。映画は子どもと鑑賞し「泣きながら見た。泣いているのは親世代だった」。コミックを人生初の「大人買い」し、最終巻は予約した。「ストーリーがつらい場面にきているので読むのが怖い気もする。作中のエピソードそれぞれが、大人には響くのだと思う」

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