「あの日との対峙は、かろうじて生きられる理由」 大川小の津波で亡くなった妹への「手紙」、姉が記録映画に 

2020年12月5日 10時11分

東日本大震災で被災した、宮城県石巻市立大川小を巡る記録映画を制作した佐藤そのみさん(いずれも本人提供)

 東日本大震災が起きた二〇一一年三月十一日の朝、宮城県石巻市の自宅で「おはよう」と声を掛けてくれた二歳下の妹を無視したことを今でも悔やんでいる。東京都内に住む会社員佐藤そのみさん(24)は市立大川小六年の妹みずほさん=当時(12)=を津波で亡くした。中学二年の自分は無事だった。「あなたに恥ずかしくない姉でいられているかな」。その答えを見つけようと、妹にささげる記録映画を制作した。都内で開かれる映画祭で六日に上映される。

◆6日に新宿で上演

 今年三月まで通った日大芸術学部映画学科の卒業記念として手掛けた。震災から長い時間が過ぎても、前を向いて生きることに戸惑いを感じている大川小の生存者や遺族に焦点を当てた。自らも卒業し、みずほさんら児童・教職員八十四人が犠牲になった大川小の校舎、震災の教訓を伝える語り部として活動する父親にもカメラを向けた。二十九分の短編。震災の犠牲者に思いをはせ、タイトルは「あなたの瞳に話せたら」にした。

記録映画「あなたの瞳に話せたら」に出てくる校舎内の一場面

 そのみさんがみずほさんへの手紙を朗読する場面から映画は始まる。「元気ですか。あっという間だね」。読み上げる声は、映像に合ったナレーションへと自然に切り替わっていく。そのみさんは「妹たちは戻らない。でもあの日との対峙(たいじ)は、私たちがかろうじて生きられる理由だ」と思いを打ち明ける。
 そのみさんの二人の友人も登場し、手紙を読む。一人は大川小を襲った津波から生還し「奇跡の少年」と報じられた当時五年生の男性。「人の目を気にして生きている。本当の自分を見つけたい」と、命を落としたクラスメートに告白する。もう一人は五年生の妹を失った女性。「神様を恨む。でも妹の分まで楽しく生きる」と約束する。
 そのみさんは「手紙なら率直な気持ちを乗せられると思った」と、手法に凝った訳を話した。「葛藤を乗り越える答えは出ないが、自分と向き合う過程を描きたかった。妹に執着せず、人生を前に進めなきゃいけないなと感じている」
 上映は六日正午から新宿区の「新宿K’s cinema(ケイズシネマ)」で。

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