<食卓ものがたり>ぷっくり太った甘い実 スナップエンドウ(愛知県豊橋市)

2020年12月5日 07時23分

出始めのスナップエンドウを収穫する船井辰哉さん=愛知県豊橋市で

 さやごと食べられ、手軽に調理できるスナップエンドウは、二〇一八年までの十年間で生産量が二倍に増えた人気の野菜だ。愛知県は生産量全国三位。作付面積の大半を占める豊橋市では、十一月末から今シーズンの収穫が始まった。
 日の光が降り注ぐビニールハウスの中の気温は二〇度前後に保たれ、まるで春のようにぽかぽか。背丈一メートルほどの株には、白いかれんな花が咲いていた。
 「食べてみりん」。JA豊橋ハウスエンドウ部会長の船井辰哉さん(49)が取れたてを真ん中で折ると、つぶらな実が姿を現した。口に入れた瞬間、さやのシャキッとした歯応えと、強い甘みが感じられた。
 JA豊橋によると、輸入物が出回っていた四十年ほど前、国産の産地を作ろうと数人の農家が栽培を始めた。コロナ禍の今年は、需要が減った観賞花の農家も新たに加わり、生産者は九十四人まで増えた。
 種をまくのは九月。収穫は五月末まで半年間ほど続く。「毎日、この人らの顔色を見てやるのが仕事」と笑う船井さんにとって、スナップエンドウは「大事な赤ちゃん」だ。水分の加減や温度をこまめに調節。冷え込む冬は暖房も入れて絶えず気を配る。
 生産量は九州の露地ものにはかなわないものの、豊橋産は天候の影響を受けにくいハウス栽培ならではの安定した品質が特徴。甘みの強い実をさやの中でできるだけ大きくしようと、厚さがぷっくり一センチ以上あるものを「秀品」と定めるなど独自の基準を設け、主に東京、名古屋の市場に出荷する。実はしっかり太らせたいが、収穫が遅れるとさやが硬くなるため、いつ取るかの見極めも大事だ。
 「晴れの日が多かった今期の生育は順調」と船井さんは満足そう。「食感や甘み、色合いの美しさなど素材が持つ力を楽しみながら、食事の主役として味わってもらいたい」。自信作は、今冬も食卓を鮮やかに彩ってくれそうだ。
 文・写真 吉田瑠里

◆味わう

 JA豊橋のスナップエンドウは「スティックサラダ」のブランド名で出荷されている。筋を取ってゆでるだけで、野菜スティックのようにいくつも食べられるから。ゆで時間を50秒ほどに抑えると、シャキッとした食感が残る。
 船井さんのお勧めは天ぷら。「衣をなるべく薄くして色合いも楽しんで」と言われ、作ってみたところ、緑が衣に透けて美しい=写真(左)。甘みは、収穫から時間がたつと落ちるので、新鮮なうちに食べてほしいという。購入の際は、がくが枯れずにしっかりした物を選ぶのがいい。

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