<笑う神 拾う神>江戸家小猫 究めたい お家芸

2019年12月25日 02時00分

公園でウグイスの鳴きまねを披露する江戸家小猫

 会場に響き渡る、澄み切ったホーホケキョ! ウグイスの鳴きまねに、客席がどっと沸く。そんな祖父の芸、父の芸を、物心つく頃から体内に染み込ませてきた。
 「でも、後を継ぐよう仕向けられたことはありません。芸事の世界は、本人が本気でやらないと」と無理強いはされなかったが、「父には、どんな仕事に就いていても、ウグイスだけは鳴けるように、それが江戸家だと言われました」と振り返る。
 慶応四(一八六八)年生まれの曽祖父・初代江戸家猫八が編み出した江戸家の指笛、ウグイスの鳴き声はお家芸だ。のどの調子が出来の鍵を握る。「基本的にのどは強いのですが、風邪をひかないこと。手洗い、うがい、のどが疲れているなというときは、六粒で千五百円のあめを必ずなめます」という声帯から、百を超える動物の鳴き声を放つ。なかにはアルパカやナマケモノなど、鳴き声がよく知られていない動物のものもあるが、前後にトークを絡め客を飽きさせない。「動物も個体差がありますから、同じ動物の声を山ほど聞くことが大切。そうすると平均値が分かってきます」とたどり着き方を明かす。
 高校時代にネフローゼ症候群を患い、二十代をほぼ療養に。デビューは三十二歳と遅めだった。「父には『色物芸人は即戦力として結果を出さないと活躍できない、早く力量をつけろ』と。それから『動物そのものになりきる、自分が照れくさそうにやったらダメ』と教わりました」
 二〇一六年、父・四代目が亡くなった。「七回忌までは、父に猫八でいてほしい」と望み、その先には、明治から令和へと一族の芸をつなぐ襲名も見えてくる。現在四十二歳。「向かないと思っていた」芸人生活も十年。ここ数年受賞続きで、今年も「花形演芸大賞」大賞、第三十六回浅草芸能大賞新人賞を受賞した。だが手綱は緩めない。「江戸家の本質の究極、動物ものまね芸の究極を追い求めたい。これからです」
 (渡辺寧久=演芸評論家)

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