<ヒューマンいばらき>安住の地に響く物語 みんなのピアノを贈る会代表・高野惣一(たかの・そういち)さん(80)

2020年12月6日 07時08分

会の事務局が置かれているイタリア料理店でピアノへの思いを語る高野惣一さん=水戸市で

 家庭で弾かれなくなったピアノを引き取って修理や調律を施し、老人福祉施設や児童養護施設などに届けるボランティア団体「みんなのピアノを贈る会」(水戸市)の代表。「会員の音楽家たちが寄贈先に演奏しに行くと、お年寄りや子どもがにこにこして聴いてくれる。その時間は本当にいいものです」と穏やかな表情を浮かべる。
 県立水戸第三高(水戸市)の元校長。会は二〇〇九年、同校音楽科の卒業生を中心に設立された。初代代表が亡くなり、一三年に後任を引き受けた。県高体連会長も務めた元体育教師だが、音楽科の生徒たちの前で趣味のギター演奏を披露したこともある音楽好きで、白羽の矢が立った。
 調律や運搬の費用は会員の会費や寄付で賄う。これまでに新しい居場所が見つかったピアノは十八台。継続してメンテナンスの予算を組める公的機関などを除き、寄贈後も責任を持って定期的に調律師を派遣している。「贈りっぱなしにせず、年に一回は調律し、時々は演奏会を開いてピアノの音を聴いてもらう」のが会の方針だ。
 近年、駅や空港などで、誰でも鍵盤に触れて楽しめる「ストリート・ピアノ」が流行している。県内の設置はまだ少ないが、寄贈先として開拓したいと思っている。第一号は、茨城空港のそばにある観光施設「空のえき そ・ら・ら」(小美玉市)。自由に弾ける形はとっていないものの、「道の駅 常陸大宮かわプラザ」(常陸大宮市)にも会が手入れして届けたピアノがある。
 今年八月、県立歴史館(水戸市)の講堂に小さなグランドピアノを寄贈。新型コロナウイルス禍のため、関係者だけでささやかなお披露目の演奏会を開いた。亡き妻が大切に弾いていたというピアノを会に託した男性の姿もあった。
 うれしそうに耳を傾けていた男性は、楽器に安住の地ができたのを見届けるように、その二カ月後に妻のもとへ旅立つ。「一台のピアノにも物語があるんだなと、感激しました」
 コロナ禍で、せっかくピアノを贈っても思うように演奏会を開けない状況が続く。「お年寄りや子どもが過ごす福祉施設でピアノの調べが響くと、空間と時間がぱっと明るくなるんです。心置きなく音楽を楽しめる日常が早く戻るのを心待ちにしています」 (宮尾幹成)
     ◇
 ピアノを寄贈したい人や、寄贈を受けたい施設を募集している。原則として県内に限る。調律や運搬の費用は会が持つが、状態が悪い場合は引き取りを断るか、修理代の負担を求めることもある。問い合わせは「みんなのピアノを贈る会」(一般社団法人ヴェッキ・アレーグリ)=電029(225)1400=へ。

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