「消費減税」に踏み切ったドイツ コロナ禍の経済対策の効果はいかに?

2020年12月6日 17時30分
 新型コロナウイルスで受けた経済への打撃を緩和するため、ドイツは日本の消費税に当たる付加価値税の減税に7月から初めて踏み切った。専門家は消費喚起に「一定の効果があった」と評価するが、消費者や事業者の反応は分かれる。日本でも賛否がある消費減税論。先行するドイツの現状を検証した。(ベルリン.近藤晶、写真も)

「付加価値減税が消費を刺激した」と語るベルリンの玩具店店主マルティン・エルシェンブロイヒさん。外出を控える人が増え、パズルやボードゲームがよく売れているという

◆減税期間は7月から6カ月 「消費を刺激」

 「減税は明らかに消費を刺激したと思う。9月の売り上げは前年比10%増。クリスマス需要も例年より早まっている」。ベルリンの玩具店店主マルティン・エルシェンブロイヒさん(54)は安堵した表情を見せた。
 ドイツでは春の第1波で3~5月に食料品店や薬局を除く全店舗が閉鎖を強いられた。連邦統計庁によると、4~6月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比9.8%減。個人消費も10.9%減と落ち込んだ。
 打撃を受けた経済を下支えするため、政府は第1波の流行が下火になった6月、総額1300億ユーロ(約16兆円)に上る追加経済対策を発表。7月からの半年間に限り、付加価値税率19%を16%に、食料品などに適用される軽減税率7%を5%に下げた。過去に軽減税率の対象品目が追加されたことはあるが、税率自体の引き下げは初めて。減税規模は200億ユーロ(約2兆4800億円)に上る。

◆税込み価格表示で税額意識しづらく 効果「小さく」

 ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は「比較的小さかったかもしれないが効果はあった。付加価値減税は迅速に実施でき、全ての国民に恩恵をもたらす利点がある」と評価する。
 減税後の7月から消費者物価指数は前年同月比マイナスか横ばいと物価は下落。減税の恩恵が大きい自動車の新規登録台数は8月に前年比で増加に転じ、7~9月期のGDPも前期比8.5%増と急回復した。ただ、前年同期比では4%減とコロナ前の水準に戻らなかった。
 消費者は「少しでも節約できるのはありがたい」という声がある一方、「減税幅が小さく、購入を増やすきっかけにならなかった」との声も。ドイツは税込み総額表示のため、税額を意識しづらい。事業者は価格変更の手間もあり、必ずしも消費者に還元されないという指摘がある。

◆再びロックダウン 低所得者など的を絞った支援不可欠

 ドイツでは10月以降、感染が再拡大し、11月から始まった部分的な都市封鎖(ロックダウン)は来年1月10日まで延長された。小売店の営業は認められているものの、10~12月期のGDPは再び停滞かマイナスが予想されている。
 「収入や雇用に不安がある中で高額な買い物をする気にはならない」と話すのは家具店のオーナー、クリスティアン.ロールバッハさん(52)。春の営業禁止措置で従業員を時短勤務にせざるを得なかった。ドイツ銀行の調査では、コロナ禍で家計収入が減った人は24%に上り、約4割が支出を減らしたと答えた。
 コロナ禍で個人消費を支えるには雇用環境の改善も欠かせない。DIWのフラッシャー所長は「付加価値減税は(駆け込み需要など)一時的にしか効果はない。ロックダウンの最中では、低所得者や打撃を受ける中小事業者への補償など的を絞った支援が必要になる」と指摘した。

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