宇宙から地球へ玉手箱 「ピンチをチャンスに」 はやぶさ2は次の小惑星へ旅立った

2020年12月7日 05時50分
 探査機「はやぶさ2」が6日、小惑星「りゅうぐう」の岩石が入ったとみられるカプセルを無事に地球へ持ち帰った。チームは故障が相次いだ初代はやぶさの経験から、さまざまなトラブルを想定して準備と訓練を入念に続けてきた。その地道な積み重ねが、危機的な状況をチャンスに変え、6年間、52億キロの旅を大きな成功で終えた。(増井のぞみ)

◆転んでもたたでは起きない 狙った2度の着陸

 「6年間の宇宙飛行を終えて、玉手箱を舞い下ろすことができた」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一教授は6日のカプセル帰還後の会見で素直な喜びを語った。燃料漏れにエンジン故障と、傷だらけで地球に戻った初代はやぶさ。今回はとても順調に見えたが実は、ぎりぎりの場面もあった。2回目の着陸の前だった。
 1回目の着陸で表面の岩石片を採取し、その後、小惑星の表面に弾丸を撃ち込んで穴を開け、再着陸して飛び散った地下の岩石を取る。両方が成功してこそ大きな成果が上がる。

管制室でカプセルの火球の中継映像に拍手する「はやぶさ2」のプロジェクトメンバーら=6日午前2時半ごろ、相模原市で(JAXA提供)

 だが、2回目の着陸に適した場所が見つからず苦戦を強いられた。2019年5月、2回目の着陸準備のため高度50メートルに降下したとき、計器に異常が起きた。墜落を避けるためはやぶさ2は自動的に緊急上昇を始めた。「だめかも」と津田さんは思ったという。
 ところが、緊急上昇で予定外のコースを飛んだ。そのときカメラが偶然、着陸に適した場所をとらえた。直径6メートルほどの平らな場所で、狙いの岩石も豊富に積もっていた。

小惑星りゅうぐうに着陸し、岩などを舞い上げ再び上昇する探査機はやぶさ2。中央の丸い部分は、はやぶさ2の底部から下にのびる円筒形装置の先端部=JAXA提供

 「これだけ広ければ着陸が狙える」。チームメンバーは喜びの声を上げた。はやぶさ2はこの場所に着陸地点を変え、7月に再着陸し地下の岩石を採取した。
 カメラは、緊急上昇が起きた時、連写する設定にしてあった。「トラブルの時もデータを取り、少しの機会も無駄にしない」という考えからだった。トラブル続きだった初代はやぶさから学んだ結果だ。カメラチーム責任者の杉田精司・東京大教授は「転んでもただでは起きない仕掛けが役立った」と振り返る。

◆生きた「初代」のトラブル 次の目的地到着は11年後

 はやぶさ2は、カプセルを切り離した後、軌道を変えて地球を離れ、次の小惑星の探査に旅立った。31年に小惑星「1998KY26」の到着を目指す。約100億キロの旅路になる。
 それが可能になったのも、初代はやぶさでトラブルを経験したからだ。初代で燃料漏れを起こした軌道変更用のエンジンは改良し、3台中2台が壊れた姿勢制御装置は4台に増やした。そのためスムーズに計画が進んで、イオンエンジンの燃料も半分が残り、次の小惑星へ向かう余裕を生んだ。

はやぶさ2の最終目的地の小惑星「1998KY26」の想像図(Auburn University, JAXA提供)

 1998KY26は直径30メートル。りゅうぐうの30分の1ほどの小さな小惑星だが、地球に接近する軌道を回っており、将来は地球に衝突して被害を出す可能性もあるという。一枚岩で固いのか、りゅうぐうのように岩石が集まりもろいのか。その構造や強度を調べることが、小惑星に人工物を当てるなどして軌道を変え、衝突を避けることにも役立つと期待される。
 はやぶさ2の活躍を支える遠隔操作の技術は、今後の宇宙探査で大きな強みとなる。この技術を将来にどう生かしていくか長期的な視点も重要だ。他の天体から試料を持ち帰るJAXAの次の計画は24年度に打ち上げる火星の衛星「フォボス」の探査機だ。はやぶさ2のメンバーが開発に関わる。津田さんはさらに次も見据え「はやぶさ2の考え方や技術を受け継いでいかなければいけない」と話す。

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