2度目の着陸にこだわったはやぶさ2 貴重な試料で生命の起源に迫れるか
2020年12月7日 06時00分
<解説> 探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で採取した岩石片を地球に持ち帰った。この試料は、生命の材料となるアミノ酸などの有機物や海の水がどこからきたのか、という謎に迫る手掛かりになる。
りゅうぐうには、太陽系が誕生した46億年前の有機物や水が、当時に近い形で残ると考えられている。地球の生命のもととなった有機物や水は、小惑星からもたらされたという説があり、試料から有機物や水が見つかればこの説を検証できる。
それには少しでも状態のよい試料が必要だ。小惑星表面の岩石は、宇宙の放射線にさらされて劣化する。地下の岩石は放射線から守られ、より保存状態が良いと期待される。
そこで、はやぶさ2は小惑星に2度着陸した。1度目で表面の岩石片を取り、その後、小惑星の表面に弾丸を撃ち込んで穴を開け、飛び散った地下の岩石を、2度目の着陸で採取した。
1度目に成功した時点で「試料は取れたのだから、リスクの大きい再着陸はせずに帰還する」という考え方もあった。しかし、チームは2度目にこだわり、難しい着陸を成功させた。
はやぶさ2が採取した岩石試料の量は0・1グラムから1グラムほどと推定される。一方、米航空宇宙局(NASA)の探査機「オシリス・レックス」は今年10月に小惑星「ベンヌ」に着陸し、表面から60グラム以上の岩石を採取したとみられる。はやぶさ2の試料は少ないが、表面と地下の両方の岩石という点で、量では計れない価値がある。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の国中均・宇宙科学研究所長は「はやぶさ2が取って来た試料がどれだけの価値を生み出すか。ここからが勝負」と語る。表面と地下で岩石はどう違うのか。生命の材料の起源にどこまで迫れるのか。試料の分析結果が注目される。(増井のぞみ)
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