<かながわ未来人>人つなぐ アートの力 障害のある作家を支援 NPO法人 studio FLAT理事長・大平暁(おおだいら・さとる)さん(49)

2020年12月7日 06時51分
 色とりどりの個性を包み込むアートの力で元気を届けようと、川崎市で十一月、障害のあるアーティストたちの展覧会が開かれた。題して「Colors」(カラーズ)。展示作品は希望者の入札で販売も行う。
 目指すのは、「障害者アート」のように、特別な呼び名で区別されない価値の発信だ。
 ある女性作家の絵には、中央にぽっかりと白い空間がある。身体的な事情で、キャンバスを回して色を塗っていくけれども、真ん中に手が届かないという。「でもその空間が、彼女の内面世界をより深く表現していると思うんです」
 オランダで実践していた活動をモデルに、自閉症など知的障害のある人たちのアート活動を始めたのは十三年前。幸区の障害者施設から「絵の指導に来ないか」と声がかかったのだ。
 多摩美術大学で絵画を専攻した。ただ、障害者に接した経験はなく、戸惑いの連続。自閉症の男性も、その一人だった。
 とても絵がうまかった。彼が描く下絵にペンを入れ、作品を仕上げる共同作業を続けた。けれども気に入らないと、彼が修正液ですべて消してしまう日々。そんなある日、転機となる出来事が起きた。
 絵画指導のさなか、別の利用者にがぶっとかまれてしまったという。すると彼が駆け寄ってきて、自分の痛みのように「痛い、痛い」と言いながら、ばんそうこうを貼ってくれた。
 「ちゃんとつながっていたんだ、と気づいた瞬間でした。寄り添っていればいい。彼に、そう学ばせてもらったんです」
 さあこれからという矢先、彼は持病のてんかん発作で急死した。当時二十一歳。「もっと早く、彼の作品を発表するために頑張ればよかった」。その後悔が今も胸にある。
 理事長を務めるNPO法人「studio FLAT」(スタジオ・フラット)には、障害のある十四人の作家が所属。企業とのコラボ商品を手がける売れっ子も。今年一月には、創作活動の拠点となる生活介護事業所を新たに始めた。
 「才能のある人が認められる。夢も希望もある。そんな当たり前に挑戦していきたい」。その積み重ねが、いつか壁を壊すと信じている。 (石川修巳)
<NPO法人studio FLAT> 2019年5月に法人格を取得。川崎市幸区の生活介護事業所を拠点に、障害のある作家の経済的な自立を目指すほか、新たな才能の発掘と育成に向けて出張指導も。今春、「かながわSDGs(持続可能な開発目標)パートナー」に登録された。

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