ネットニュースにタダ乗り!?アメリカでGoogleとFacebookが批判される理由<メディアと世界>

2020年12月7日 17時00分

米議会の公聴会で昨年6月、米新聞業界を代表して証言するデビッド・チャーバン氏=ワシントンで、白石亘撮影

 米グーグルとフェイスブック(FB)がネット配信されるニュースにタダ乗りしている、との批判が高まっている。米議会下院が10月にまとめた報告書では、米メディア幹部の証言をもとに、ニュース業界に支配的な力を乱用したとして、救済策を提言した。信頼できる報道が減る一方で、ネット上には誤った情報が広がり、民主主義に悪影響を与えるとの懸念も強まっている。 (ワシントン・白石亘)

◆2社が10年で広告市場を激変させた

 「実質的に2つのプラットフォーマー(PF)がデジタルニュース業界の規制当局として機能している」。北米で2000の新聞社などが加盟する業界団体「ニュース・メディア・アライアンス」のデビッド・チャーバン最高経営責任者(CEO)は、独占禁止法に関する米議会の公聴会で証言した。
 多くのネット利用者にとって、グーグルとFBはニュースのまとめサイトや交流サイトを通じ、ニュースへの入り口となる。メディア側も自社サイトの訪問者数を増やすため、PFにニュースを提供する以外に選択肢がなくなりつつある。
 一方で、PFはニュースの「仲介役」にとどまらずネット上に人々の関心を引きつけ、広告で稼ぐ巨大広告会社の顔を持つ。米ネット広告市場ではこの2社が5割超のシェアを持ち、米新聞業界の広告収入は10年余りで3分の1に減った。
 「業界にとって収入の柱だった広告は崩壊した」。米紙ウォールストリート・ジャーナルを傘下に持つニューズ・コープのデビッド・ピトフスキ法律顧問はこう明言し、「PFはニュースの制作に投資せずに、広告収入の大半を吸い上げ、ニュースの品質に責任を持つことを拒否している」とタダ乗り批判を展開した。

◆「巨大な農場で働かされる小作人のよう」

 だが、ネットニュースの流通を支配するゲートキーパー(門番)として、PFの存在感は大きくなる一方だ。雑誌ワイアードの幹部は「巨大な農場で働かされる小作人のようだ」と立場の弱さを表現する。
 例えば、グーグルは昨年6月、検索結果に表示される順位などを決めるプログラムを変更。その結果、ある大手ニュースサイトはグーグル経由の訪問者数が半減したという。メディア経営には打撃で、PFは「だれが勝者になるかを選べる」ほどの力を持っているという。
 前出のチャーバン氏は「いかなる報道機関も単独でPFに太刀打ちできない。自社のニュースが降格させられたり、排除されたりするリスクが大きすぎるからだ」と訴える。
 これを受け、米議会は独禁法の例外措置として、立場が弱い報道機関がまとまってPFに対し、ニュース使用料などを団体で交渉できる救済措置を勧告した。
 米国の先を走るのがオーストラリアだ。交渉力の差を埋めるため、法律でグーグルとFBにニュース使用料の支払いを義務付ける検討を進める。まず報道機関とPFが話し合い、使用料で合意できなければ、法的な強制力のある仲裁でニュース制作にかかる公正な金額を負担させる。議会で法案が成立すれば世界初だ。

◆ジャーナリズムが衰退…誤情報が拡散しやすく

 だが、問題はメディア経営にとどまらず、「信頼できるジャーナリズムが衰退すれば、民主主義と市民生活に深刻な影響を与える」と米議会は警鐘を鳴らす。

マット・ストーラー氏=本人提供

 巨大IT企業に独禁法の適用強化を訴える「米国経済自由プロジェクト」の調査責任者を務めるマット・ストーラー氏は「ネット上の情報の流れがグーグルやFBに一極集中し、メディアの多様性も失われた結果、陰謀論や反社会的なコンテンツが広がりやすくなった」と指摘する。
 ストーラー氏はその要因として、PFが広告の負の影響に対処できていないとの見方を示す。「広告は情報の流れを広告主に有利な形にゆがめる恐れがある。新聞などの伝統的なメディアは、広告と編集の部門を切り離すなど、文化的な障壁を設けてきたが、それが機能しなくなった」と語る。その結果、かつてジャーナリズムを支えた広告収入の一部が、誤情報を拡散させる結果になったという。

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