大女優の秘めた思い 是枝裕和監督 日仏合作「真実」
2019年10月3日 02時00分
女優とは、演じるとは何か。そして家族とは-。是枝裕和監督(57)がフランスの大女優、カトリーヌ・ドヌーブ(75)を主演に迎えた新作映画「真実」が11日に公開される。是枝監督にとって、初経験の国際共同製作(日仏合作)で、共演はドヌーブ同様、是枝の才能を認めたアカデミー賞女優ジュリエット・ビノシュ(55)、ハリウッドスターのイーサン・ホーク(48)ら豪華な顔触れが飾った。 (竹島勇)
八月末に開幕したベネチア国際映画祭コンペティション部門では受賞こそ逃したが、日本人監督作品としては、初のオープニング上映された。出演者に日本人俳優はいない。
舞台は国民的女優、ファビエンヌ(ドヌーブ)のパリの自宅。彼女が出版する自伝「真実」の内容が気になる脚本家の娘リュミール(ビノシュ)が、テレビ俳優の夫(ホーク)、七歳の娘と米ニューヨークから訪ねてくる。ファビエンヌの現在のパートナーや、秘書たちも本の中身を知らされていない。
リュミールは「真実」を一読し、「娘思いだった」などと自分を美化したうそばかりが書かれている上、ライバル女優でリュミールが慕っていた今は亡き女優サラに関する記述がないことに激怒し、母をののしる。しかし、やがてリュミールは「真実」に書かれなかったファビエンヌの本当の思いを知る。
是枝監督は「ドヌーブらの素晴らしい演技やスタッフの力量で、(当初)抱いていたイメージより明るくみずみずしい作品になった。満足しています」と率直に語る。
ファビエンヌは冒頭、不遜に描かれる。撮影中の劇中劇の映画については「大した映画じゃないわよ」とばっさり。彼女の影響を受け継ぐ女優を問う質問には「フランスにはいないわね」とにべもない…。実際の大女優、ドヌーブはどんな人なのか。
「毒舌家でわがまま」。是枝は穏やかな笑顔で振り返る。「せりふは覚えてこない。現場に遅く来て、初めて台本を開け『ここはこう演じたいんだけどいいかしら』って毎日でした」
「(一つの場面を)八回から九回演じてもらうことになるんですが、中に一回本当に素晴らしい演技がある。彼女も感じていて『もう今回ので終わり』と言い切る。でも本当にチャーミングさがある」と話す。
ドヌーブは是枝監督と、この作品をどう評価したのか。ドヌーブから送られてきたメールの内容を教えてくれた。「この作品は是枝が思っているより遠いところへ届くと思うわよ。」
TOHOシネマズ日比谷ほか、全国で公開。
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