ようこそ!マイホームタウン 伊藤理佐×新中野

2020年12月23日 11時01分

駆け出しの漫画家として過ごした新中野


今回のゲストは漫画家の伊藤理佐さん。17歳でデビューして以来、『おるちゅばんエビちゅ』『おいピータン!!』などのヒット作を量産してきた伊藤さんが、上京して初めて住んだ街「新中野」を紹介します。“オットの人”こと、吉田戦車さんとのウラ話も飛び出しますよ!

保育園で決めた漫画家の道


 いつもの暮らしのふとした瞬間に感じる、かもしれない小さなコトを面白おかしく描いたり、急に結婚したり、いろいろなダイエットを試したり家を建てたり売り飛ばしたり。なんだかもう伊藤理佐さんという漫画家さんは本当に──面白い。
「17歳でデビューしてから早ウン年。これまでずっと愛とか人とか生活とか、大きなテーマをサラッと伝えるのが漫画のチカラだと思っていたんですが、最近考えをあらためたんですよね。身のまわりの小さなこと、むしろどうでもいいようなことをネタにして、薄めて伸ばして広げていって、一所懸命丁寧に描いていくことが私の仕事なのかなって」
 伊藤さんが漫画家を目指したのは保育園のころ。「なれると確信してました」と笑顔で振り返る。
「いとこの家に通いつめて、少女漫画からハードボイルドまで、そのへんにある漫画という漫画をむしゃぶり読んでました。そのうちに『私も描きたいな』って思うようになり、お友達の水筒に描かれてたお姫様を黒板に描いたら『うまい!うまい!』と大絶賛。そこですね、道を決めたのは(笑)」
 その後、17歳のときコミック誌『月刊ASUKA』でデビューする。長編の恋愛漫画を送りたかったそうだが、投稿の締め切りに間に合わず、なんとか描いた4コマギャグ漫画で掲載が決まったというのもなんとなく伊藤さんらしい。
「勉強はからっきしで、先生が進路を心配してくれていただけに『うん!漫画家がいいな。いいよいいよ!』という感じで喜んでくれましたし、親も上京することには反対しませんでしたね。漫画家になるんだったら広く世界を見とけと送り出してくれました。進学する学校を決めるより先に、母がアパートを契約してきたのは私もビックリしたけど(笑)」


いまの「伊藤理佐」につながる暮らし


 こうして東京生活がスタートした。学校と先輩漫画家のアシスタント、自分の作品づくりと出版社通いの毎日。それだけで2年があっという間に過ぎていった。そんな時代を見守ってくれていた街が、今回の舞台「新中野」だ。
「高校を卒業してすぐに住んだ街ですから本当に思い出深いです。初めての東京生活、初めての一人暮らし、初めてのイロイロ(笑)。家賃2万8000円、4畳半のアパートでしたけど、実家では4畳半に3人姉妹で過ごしていましたからワタシ的にスペースが3倍に広がったようなもので。好きなものに囲まれながら、一人きりの空間で漫画を描けるのはシアワセでしかなかったですね」
 少しいけば新宿のビル街、いかにもTOKYO!という眺望がすぐそこにある。はたまた隣の部屋からはカップルの“いろんな声”が聞こえてくる。
「日常を切り取ったり、男女のちょっぴりエッチな話を描いてるのは、新中野での生活がベースになっています、間違いなく」
 この取材がひさしぶりの新中野かと思いきや、先日ご家族で駅前の中華料理屋さんに来たそうだ。
「学生時代はお金がなくて、ロクに外食もできなかった私が1杯1000円超のラーメンを娘とオットの人(吉田戦車さん)と食べてるなんて……感慨深いというか、なんじゃこりゃっていう不思議な感覚で自然とお酒が進みました(笑)」


「リサ、逃げ切ろう!いまならいける」


 漫画家の吉田戦車さんとは2007年に結婚。知り合ってからはずっと飲み仲間として付き合っていたが、結婚を決めてからの動きは早かった。
「私が『やっちまったよ一戸建て!!』で建てた家をサクっと売って、オットの人と一緒に古い一軒家を手を入れて、いまは《同じ屋根の下/別の部屋》を仕事部屋にしています。2010年に娘が生まれてから『おかあさんの扉』などの育児コミックエッセイも描くようになりましたし、うん、やっぱりオットの人との結婚が一番の節目でしたね」
 娘さんの学校のPTAに参加すれば、登下校時には交通安全の旗を振る。少しずつママ友が増え、知り合いに囲まれるいまの暮らし──そうした毎日を過ごしている伊藤さんの中には、心地よさと既視感が共存しているようだ。
「別にイヤじゃないんです。すごく落ち着くんです。ただ、ただね。長野の実家のような近所と密接すぎる距離感の暮らしから、東京でちょっとツンツンしたライフスタイルを経験してふと気づくと、やっぱり人と人との距離が近いコミュニティに落ち着いてるんですよね。一周まわって戻ってきた感じです」
 デビューから30年以上にわたって、漫画業界で走り続けてきた伊藤さん。これからを考えたとき、どんな“自分”をイメージしているのだろう。
「いい歳のとり方をしたいなって思いと、好きに囲まれてるいまの暮らしを大切にしつつ、あとは……私たちはいい時代に漫画を描かせてもらいましたからね。このままの勢いで、ダッシュでブワーっといきたい。最近はオットの人と話すたびに、『リサ、逃げ切るぞ!俺たちならいける!』って励まし合っています(笑)。」

◇新中野図鑑 伊藤理佐さんのオススメスポット



中国料理 天祥
「家族で行ったときは、娘はあんかけチャーハンとか焼きそばとかを食べて。親はひたすら飲み&おつまみでした。シアワセ☆彡」
住所:東京都中野区中央4-1-1

杉山公園
「学生時代、アパートから駅まで向かうときに必ずこの公園を突っ切っていました」
住所:東京都中野区本町6-15

女子美術大学 短期大学部
「私の出身校です。単行本が出るたびに先生がサイン会を企画してくれて、ありがたかったですけどホント恥ずかしかったです」
住所:東京都杉並区和田1-49-8
※新型コロナウィルス感染症の影響で、掲載したお店や施設が臨時休業していたり、営業時間などが変更になっている場合がございますので、事前にご確認ください。

伊藤理佐さんのサイン入り色紙プレゼントの募集は終了致しました。



◇PROFILE
1969年生まれ。長野県出身。87年『お父さんの休日』でデビュー。『おいピータン!!』で第29回講談社漫画賞少女部門を、『女いっぴき猫ふたり』『おいピータン!!』『おんなの窓』の3作で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。他にも代表作品として『おるちゅばんエビちゅ』『やっちまったよ一戸建て!!』『おかあさんの扉』『なまけものダイエット』など多数。プライベートでは2007年に漫画家の吉田戦車さんと結婚。一児の母。
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