「政府から切り離し」を学術会議に迫る 自民PTが独法移行の提言書、任命拒否問題「すり替え」思惑も

2020年12月10日 05時50分
 日本学術会議のあり方を検討する自民党のプロジェクトチーム(PT)は9日、独立行政法人などへの移行を柱とする提言書をまとめた。高い独立性を求める学術界の意向を逆手に取り、政府機関からの切り離しを迫る姿勢を鮮明にした。議論の発端となったのは菅義偉首相による新会員任命拒否だが、違憲・違法の指摘が根強い人事介入の問題から、論点を組織の見直しにすり替えたい思惑が透ける。(山口哲人、生島章弘)

◆「新しい組織としてスタートすべきだ」

 「科学技術や学術界がより国民に開かれ(政府と)政策的に連携を取れるのが世界の潮流。新しい組織としてスタートすべきだ」
 PT座長の塩谷立・元文部科学相は会合後、学術会議を政府から独立させる意義を記者団に強調した。
 提言書は、次の会員改選期にあたる2023年をめどに、独立行政法人や特殊法人などへ移行すべきだと明記。今後1年以内に新たな組織形態などを定め、その後に設置の根拠法である日本学術会議法を見直すスケジュールも示した。近く井上信治科学技術担当相に提出する。

◆わずか2カ月で提言まとめる

 議論のきっかけは10月、首相が学術会議から推薦された新会員候補6人の任命を拒否した事実が表面化したことだった。推薦通りの任命を行うと解釈されてきた法の規定に反し、憲法が保障する「学問の自由」の侵害にも当たるという批判が学術界や野党から噴出。すると自民党は組織見直しの必要性を主張し、PTを発足させ、野党が「論点のすり替えだ」と反発する中、わずか2カ月で提言をまとめ上げた。
 学術会議の会員は特別職の公務員になると定められているが、政府機関から切り離せば公務員ではなくなる。「そもそも任命する必要もない」(自民党幹部)状況をつくり出せる。
 学術会議は現在、年間10億円の国費で運営されているが、提言は独立後の新組織に関し、法人の形態に応じた国の交付金のほか、政府からの委託研究費で自主財源を確保するとの方針を示した。政権の考えに沿った研究を行えば財政的に潤い、反すれば資金調達に窮するようになる仕掛けだ。

◆「軍事分野の研究反対」に不満くすぶる自民

 科学者が太平洋戦争に協力した反省を踏まえ、1949年に創設された学術会議は、これまで3回にわたって軍事・安全保障分野の研究に反対する声明を出しており、自民党内には不満がくすぶっていた。除外された6人は、安倍政権下で成立した安全保障関連法などを公然と批判してきた。
 「学術会議は政策と連携を図る取り組みが遅れている。ここが本当に機能するようになってもらうことがわれわれとしても強い願いだ」。PTの大塚拓事務局長の発言には、財政支援を盾に活動をコントロールしたい思惑がにじむ。

◆軍民両用技術の研究求める科技相

 政府側は、井上氏が梶田隆章会長との会談で軍民両用技術の研究を検討するよう求め、政府からの独立に言及するなど既に「圧力」を強めている。党からの提言を受け、組織改編の検討を加速させる見通しだ。
 「学術会議が独立したいなら、すればいい。金を出さないなんてことはないんだから」と官邸幹部。学術会議が10月2日付で、任命を拒否された6人の再任命と理由の説明を求め、首相あてに提出した要望書はたなざらしのままだ。

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