<英国王室の舞台裏>(4)エリザベス2世 25歳で即位 旧連邦諸国の象徴

2020年12月10日 07時23分

ドロシー・ウィルディング撮影、ベアトリス・ジョンソン彩色「エリザベス2世」1952年、ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー蔵 (C)William Hustler and Georgina Hustler/National Portrait Gallery, London

◆関東学院大・君塚直隆教授が解説

 鮮やかな真紅をバックに浮かび上がる美しい女性。ウィンザー王朝四代目の君主にして、いまも英国に君臨するエリザベス二世(在位一九五二年~)。この写真が撮られたのは、彼女が父ジョージ六世の突然の死にともない、王位を継いでまだ三週間も経(た)っていなかったときのことである。女王は二十五歳という若さであった。
 当時の英国は、第二次世界大戦(一九三九~四五年)の傷痕がまだ癒えない時期にあり、翌五三年六月二日に行われた女王の戴冠式は、国民総出の一大イベントとして盛り上がりを見せた。この頃にようやく一般に普及するようになったテレビが、国中に広まったのがこの戴冠式中継からだった。実に二千万人もの人々(当時の英国の人口の約半分)がテレビに釘(くぎ)付けになったとされている。
 しかし、エリザベス二世は高祖母ヴィクトリア女王とは異なっていた。英国はもはや「大英帝国」とは呼べないほどに衰退していた。彼女の即位から十年もしないうちに、アジアやアフリカの植民地は次々と独立していった。
 とはいえ、独立した国の多くは「コモンウェルス(旧英連邦諸国)」という共同体にそのままとどまり、首脳同士の会議や若者たちのミニオリンピックが定期的に開催されるようになった。その首長として君臨するのも、またエリザベス女王陛下なのである。しかも、彼女は決してお飾りなどではない。コモンウェルスの首脳たちと、南アフリカを支配したかの悪名高いアパルトヘイト(人種隔離政策)を終焉(しゅうえん)に導いたのも、また女王陛下なのだ。
 さらに長い在位のなかで実に百十回もの海外訪問を行い、訪れた国は延べで三百五十を超える。この日本にも一九七五(昭和五十)年に英国の君主として初の公式訪問を果たした。
 いつしかエリザベス二世は、ヴィクトリアが持つ最長寿記録(八十一歳)も最長在位記録(六十三年)もあっという間に更新し、今年で在位六十八年、満九十四歳の誕生日を迎えた。
 二〇二〇年に世界を襲ったコロナ禍にあっても、BBCのテレビを通じて国民に団結を訴えた女王の姿は、二十一世紀の今日においてもまさに国民統合の象徴なのであろう。
  (君塚直隆=関東学院大学国際文化学部教授)
 =おわり
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